浮気



『ぶぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜』

翼宿は鉄扇で自分に火をつけた。
仲間を守るために・・・



その後、翼宿は宿のベッドで休んでいた。
井宿はせっせと翼宿の世話をしている。

軫宿がすぐに助けに入って治療したもののまだ少し傷が
残っていたのである。


井宿は相変わらず治療に専念している。
しかし、いつもとは違っていた。

井宿が一言も話さないのである。
いつもなら翼宿が怪我をしたとあらば、もちろん世話もするが、
とにかく心配らしくず〜っと翼宿に話しかけている。

「あ、あの、ちちり?」
「・・・・・」
「どないしたん?」
「・・・・・・・・・・」

鈍感な翼宿は井宿が一体どうしたのかわからなかった。
ただ、いつもと違う井宿が心配で・・・

「・・・・・・・・・・のだ?」
「・・・えっ?今なんっちゅーたんや?」

「なんで浮気なんてしたのだ、と言っているのだ。」
「うっ・・・、そ、それは・・・」
「答えられないのか?」

口調が変わった。
井宿の口調が変わると言う事は本気で怒っているという事だと
翼宿はもちろんわかっている。

でも、答えられなかった。
気づいたのはつい最近だったし、女を好きになった事などなかった
翼宿にはわかるはずもない。


「答えられないと言うのか?」
「・・・しょうがないやん。でも、井宿が今でも1番なのは
変わらへんで・・・」

翼宿は顔をほのかに赤くしながら小声で答えた。
でも、井宿が納得するはずがない。

「しょうがないで済む問題なのか?翼宿の思いはそんなものだったのか?
俺は真剣なのに翼宿にはこの気持ちは届いてなかったのか?」
「そんなことあらへん!」

翼宿は起き上がって一生懸命主張した。
痛みを堪えて・・・
でも、井宿の質問にはやはり答えられない。


「・・さない・・・。」
「・・え?」

「許さない!!」
そういうと井宿はいっきに翼宿をベッドの上に押し倒した。

「ちちっ、んっ・・・」

井宿は翼宿の口を自分の口で封じた。
どうせ、翼宿はさっきの返事はしてくれない。
弁解なんて聞きたくなかった。

口付けは最初から貪るようなものだった。


翼宿は怖かった。
いつもの井宿とは明らかに違っていて・・・
すぐに体が熱くなっていく。
抵抗しようとしたが、井宿の術にかかって体が動かない。
あふれた唾液が首筋を伝っていく。

「・・・はぁ!はぁはぁ・・・」
ギリギリまで呼吸を奪い、井宿は口を離した。
そして、翼宿の服に手をかけ脱がそうとしたその時・・・

『っぱぁん!』

乾いた音が響いた。


翼宿が隙を狙って井宿の術を解き、井宿の頬を平手打ちしたのだ。

「・・・・・」

井宿は何が起こったのか理解出来なかった。
平手打ちなんて、殴られたなんて初めてだった。
翼宿はいつも優しくて、抱いている時はもちろん、普段だって
人を冗談でなくいきなり殴るなんてことはなかったから。
翼宿の上からどいて、立ち尽くしていた。

「俺、こんな井宿なら・・・、キライや・・・」

井宿はハッとした。

「翼宿が悪いからだ。どうして俺が怒られなくちゃいけない?!
浮気する方が悪いん・・」
「わかっとらんのはおのれじゃ!俺かて・・・、
俺かて悩んでたんや。俺には、もちろん井宿がいるし、
あいつにはたまがいる。それなのに俺は・・・。
挙句の果てに術にかけられて皆の事傷つけてまうし・・・」

井宿は静かに聞いていた。
知らなかった。
翼宿がこんなに自分の事をだけでなく、皆の事を深く
考えていたなんて・・・
あの翼宿がこんなに深く・・・
気づいてやれなかった
やきもちを焼いた自分が恥ずかしい。

もうさっきの質問はどうでも良くなっていた。

「すまなかったのだ、翼宿・・・。オイラが悪かったのだ。」
「けっ、気付くんが遅いんじゃ・・・。でも、俺の方こそすまんな。
俺は・・・、井宿が1番やで・・・。」
「オイラももちろんなのだ。」

口調が元に戻っていた。
翼宿は安心したのか、とびっきりの笑顔をして見せた。

『あ、っ明らかに誘われたのだ!』
井宿はまた理性が飛びそうになった。

その時、翼宿が恥ずかしそうに小さく言った。

「もう1度抱いてくれへんか?」
「・・・え?」

井宿は聞き返してしまった。
あまりに突然で・・・。
翼宿はいつも井宿を意識的に誘ったりはしない。
しかも、ついさっき自分があやうく傷つけてしまいそうだった
のに・・・
井宿は呆然とした。

「ん?井宿、聞いとるんか?」
「もちろんなのだ。」

やっと我に返った。

「でも、ホントに良いのだ?」
「ドアホゥ。せっかく俺から誘ったのに。嫌なら良いんやで。」
「そんなことないのだ!」
「でも今度はさっきみたいなのはなしやで・・・」
「もちろんなのだ。」

素顔の井宿はいつも以上に優しく笑いかけた。

翼宿は嬉しくなったのか、自分からキスしてきた。
「ん・・・」

始めは軽く、だんだん深くなっていく。
でも、さっきの怖さはどこか行ってしまっていた。

「っはぁ・・・」
呼吸の限界までキスを続けたので、2人はおもいっきり息を吸っていた。


「そういえば、さっきは殴って悪かったな・・・。痛かったか?」
「あぁ、すっごく痛かったのだ!」
「えっ?!」

翼宿は本気で心配しているようだ。
そんな顔もまた可愛い。
その言葉はさすがに飲み込んでおいた。

「嘘なのだ。あれで我に返れたのだ。感謝するのだ。」

そう言って優しく口付ける。



「ところで、さっきの井宿の質問やけど・・・」
「あぁ、あれはもう良いのだ。翼宿の気持ちはちゃんとわかっているのだ。」
「・・・、好きになるのに理由っているんか?」
「ん〜、多分いらないのだ。」

「・・・、じゃあ、さっき井宿が聞いた事に答えなんて
あらへんがな!?」
「そういえばそうなのだ。今日は翼宿冴えてるのだ」
「じゃ、さっき俺がされた事もなんも意味ないやねん!!!」
「まぁ、気にしないのだ。」


「おんどりゃ〜!!!」











  ☆管理人からのコメント☆

私の始めての作品です!駄文で短くてスイマセン・・・。どうしても書いてみたかった井×翼。
でも、微妙に翼宿が主導権を握ってる所もあり、よくわかりません(汗)でも、なんとか書けました。
井宿がやきもちやいてるのがかわいいなぁ、なんて思いながら書いてました(^^;)
私にとってこのカップリングが1番です!!!やっぱ邪道ですか・・・?