それぞれの思い 3



「井宿〜!!!」


「翼宿っ!」

翼宿は振り返った。
するとそこには今呼んでいた本人が・・・

「井宿?井宿なんか!?」
「翼宿!翼宿の呼ぶ声が聞こえたのだ。久し振りなのだ」
「井宿〜!!!」

そう叫ぶと翼宿は井宿に駆け寄り両手を井宿の肩に置いた。
そして、顔をうつむいた。

「ん?どうしたのだ?・・・翼宿?」

翼宿は泣いていた。

「・・おぉ、すまんな。なんか、皆の事考えてたら急に井宿に
会いとうなって。でも、何度呼んでも返事なくて・・・。どうやら
俺の気がよわなったみたいで・・・。でも、会えてよかった・・・。」
「オイラもなのだ。翼宿に会いたかったのだ。それに、オイラもちょうど皆の事を考えていたところだったのだ。」
「井宿もか?偶然やな。へへっ。」
「本当なのだ。」

「ここ1ヶ月、ずっと皆の事考えてたんや。・・・もう、俺ら以外誰も
この世界にいないんやな・・・。」
「そうなのだ・・・。」
「なんや寂しいな・・・。」
「翼宿が感傷に浸るなんて珍しいのだ。今日は雨なのだ?」
「じゃかしい!余計なお世話や!」
「あはは、なのだ。」

しばらく翼宿は静かに泣いていた。



「あっ、そうなのだ!」
「ん?どないしたん?」
「オイラ、今まで北甲国にいたのだが、これから柳宿の墓参りに
行こうとしてたのだ。」
「そうやったんか。呼んでもうてすまんな。」

翼宿は素直に謝った。こんな翼宿は珍しい。
井宿はこんな時なのに翼宿を可愛いと思っていた。

『だっ、駄目なのだ!不謹慎なのだ!第一この思いは翼宿には
言えないのだ!!』


「・・・ん?井宿、どないしたん?」
「なっなんでもないのだ!・・そっそうなのだ!これから一緒に墓参りに
行かないかなのだ?」
「おうっ、ええなぁ!いこいこ!」
「ではつかまるのだ!」
「おぅ!なんや・・・久しぶりやな。」
「では行くのだ!」
「おう!」

袈裟が宙を舞い地面に降りる。
それに2人が乗った途端2人の姿は消えた・・・。





2人は北甲国の黒山の頂上にいた。

「さすがは井宿や!場所もピッタシや!」

翼宿はとびっきりの笑顔でそう言った。
さっきまで泣いていたのが嘘みたいである。

『まずいのだ!翼宿、子供のように可愛いのだ〜。誘われたのだ〜!!』

笑顔付きの褒め言葉ときたので井宿は翼宿にいちころである。
でも翼宿は気づいてない・・・。

『こういうのが1番困るのだ〜!』

井宿は頑張って自分の気持ちと葛藤していた。
翼宿はこのことにも気づかない。
かなり鈍感である・・・。

「さぁ、墓参りするで!」

井宿はやっと葛藤を終えた・・・

「翼宿ぃ!そんな浮かれる事ではないのだ!」
「わかっとるがな!・・・・・おっ、ここやな」

翼宿は1足先に墓の前に立った。
井宿が後を追って翼宿の横に立った。

「ここに柳宿が眠ってるのだ・・・。」
「柳宿〜、無事朱雀は呼べたで〜。」
「翼宿!柳宿もそれは知ってるのだ!だって霊魂としてあそこにいたのだ!」
「あっ、そやった・・・。」
「忘れるななのだ!」
「すまんすまん・・・」


「ここへ来るのも久し振りなのだ。あの時とあんまり変わってないのだ。」
「そうやな・・・。」

北甲国はもともと1年中寒い。
更に山の上ともあって雪は残っている。

「うう〜さむっ!」
「やっぱここは寒いのだ。墓参りも大体終わったし帰るのだ。」
「そうしよそうしよ。」
「では柳宿、また来るのだ。」
「また来たるで!」

そういって2人は再び袈裟の上に立った。
2人の姿は再び消えた。





「またピッタシや!」
「そうなのだ」

2人は至t山に戻ってきた。

「そや、2人で話さへんか?俺と攻児しか知らん場所があるんやけど
そこでどや?」

井宿はまたドキッときた。

『2人っきり?!翼宿ぃ、いつまでオイラを誘えばいいのだ〜!?』

井宿はまたそんな事を考えていた。

『平常心なのだ。第一オイラはまだ翼宿に気持ちを言ってないし、
それに翼宿を困らせたくないのだ!』

なんとか平常心に戻った井宿は、

「もちろん良いのだ」

と答えた。

「ほな行こか!」
「わかったのだ。」


そして2人は目的地に向かって歩き出した。











  ☆管理人からのコメント☆

いよいよ第3弾!まだあんまり大進展できませんでした・・・。次回こそは!!!
今回は翼宿の無意識の誘いが大炸裂!翼宿・・・あんたは鈍感すぎる・・・。
ハッ!そういうふうに書いてるのは私だ〜!皆様すみません・・・。

では次回もお楽しみあれ☆






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