お前の為ならば



「大変だっ!!」
「どうしたの?」
「大事な薬味がきれてる!」

料理に欠かせない、日本で言う塩のような物なのだろう。

「買いに行かなくちゃね」
「この暑い中を〜?!」

今は倶東国も暑い時期なのだ。
外では太陽が容赦なく照り付ける。

おまけに、今から行く北の街への道は、周りに木1本もないのだ。
つまり、陽射しを遮る物が何もない。

「じゃあ、僕だけで行ってくるよ。」
「いやっ、俺も行くって!」
「大丈夫だよ」
「だって!」

2人は街から遠い所に住んでいるため、そう頻繁に買い物へ行けないのだ。
そうなると、必然的に1回に買う量は多くなる。
時には、2人でも持つのがやっとという量を買ってしまう時もある。
だから1人で行かせるのは心配だったのだ。

「大丈夫だよ、僕1人でも」

やはり亢宿にはお見通しであった。

「うんん、俺も行く!」

言うな否や、角宿は出かける支度を始めた。

「ありがとね、角宿。でも、日射病には気をつけるんだよ。」
「わかってるよ!
おしっ、さっ速く行こうぜ、兄キっ!」
「うん。」

こうして、2人で買い物へ行くことになった。

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陽射しが2人を照り付けた。
まだ太陽が東から昇り始めた位で出発したのに、もう日は高くなっていた。

「あち〜、それに眩し〜」
「もう少しだから、頑張ろう・・・」

角宿が亢宿の方を見た。
陽射しがちょうど視界に入ってきてとても眩しかった。
目を凝らしてみると、亢宿が自分以上に汗をかいていることが分かった。

亢宿が右、角宿が左側を歩いた。
しかし、どちら側も辺り一面土と石しかない。

2人は時折吹くそよ風だけを便りに、街へと向かった。

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街からの帰り。

日はやっと西側に大きく傾いてはきたが、相変わらず陽射しは強かった。
角宿は亢宿の方を見る度に眩しさに目を細めていた。

案の定、かなりの量の物を買う事になった。

だが、持っている量は明らかに亢宿の方が多かった。

「兄キ、やっぱ俺もっと持つって・・・」
「大丈夫だよ。角宿の調子が悪くなるよりはずっと平気だよ」
「俺そんな柔じゃねぇよ〜!!」
「良いの良いの」

亢宿は構わず歩き続けた。
仕方なく、角宿は亢宿の後をついていった。

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あと少しで家、と言う所まで来た。
しかし、その時角宿は亢宿の様子がおかしい事に気付いた。

いつもより汗が多く、息も荒い。

「兄キ・・・調子悪いんじゃねぇのか?!」
「・・・へ、平気だっ・・・て・・・。暑い・・・だけだよ」
「俺が荷物持つって!!」

そう言って角宿は荷物を強引に持とうとした。
だが、亢宿はそれを許さなかった。

「もう少し・・・だから、大丈夫・・・だよ」
「でもっ!!」
「ほら、速く行こう」

亢宿はすたすたと先を行ってしまった。
こうなってしまっては、亢宿の言う事に従うしかなかった・・・

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家に到着した時には、もう日が地平線に隠れ始めていた。

角宿は、買ってきた物を片付けようとしたのだが
「今日は付き合ってくれてありがとな。疲れただろ?
僕が片付けておくから、お前は寝室でゆっくり休んでおいで」

と言って手伝いを許さなかった。
渋々従うのだが、やはり亢宿の様子が気になって仕方がない。
明らかに様子がおかしいのだ。

寝室へ行くふりをして部屋を出たが、入口の裏側で様子をうかがった。
すると・・・

「はぁ、はぁ・・・」

亢宿は、椅子に座り込み、ぐったりとしていた。

「角宿に注意しておいて、自分が日射病になっちゃうなんて・・・。
頼りない兄キだな・・・」


『やっぱり・・・』

昔から体の弱い角宿に対し、亢宿はどちらかというと強い方ではあった。
しかし、逆に1度悪くなるととことん悪化してしまう。
おまけに、それをすぐに言い出さず我慢してしまうのだ。

角宿は亢宿に歩み寄る。
しかし、亢宿はそれにすら気付かない。
前に回り込んだ所でようやく角宿に気付いたようだ。

「角宿・・・?お前・・・」
「もう我慢しない!」
「えっ、なんの事・・・?」

角宿は言葉を返す代わりに、亢宿のおでこに自分のをそっと当てた。

「やっぱり・・・日射病だよ。あんなに沢山の荷物持って直射日光の中を
歩くから・・・
僕のせいで・・・」

最後に小さく付け加えて、角宿はおでこを当てたまま目を瞑り自分を
責めた。
しかし、それも束の間顎に指の掛かり軽く上に向けさせられた。
そして、次の瞬間には熱い物が自分の唇に当てられていた。



とても熱かった。
でも、その感触は紛れもなく兄、亢宿の唇のもの
目を開ける事もできず、ただただ亢宿の熱を感じていた。
いつも以上のそれに、角宿は自分の体も熱くなるのを感じた。

息の荒い亢宿は、それでも限界まで角宿を開放しなかった。

先に自分の息が上がってしまうのではないかと思った頃、ようやく
開放された。

角宿が目を開ける。
その視線の先には優しい亢宿の顔があった。

「なんで兄キが病気になってるんだよ・・・荷物もほとんど1人で
持って・・・。俺は兄キの役には立てないのかよ?!」
「そんなんじゃないよ」
「じゃあ、なんで?!」

亢宿は角宿から視線を離したまま何も答えようとはしなかった。

「兄キ!!!」

もう1度名前を呼んだ。
亢宿は重い口を開いた。

「角宿を・・・少しでも守りたかったんだ・・・、陽射しから、
お前を・・・・・」
「・・・えっ?」

角宿には亢宿が何を言ってるのかわからなかった。
しかし、しばらく考えてみると、思い当たる事があった。

「兄キ・・・、もしかしてずっと、自分を盾にして陽射しから守って
くれてたのか・・・?」
「角宿は僕より体弱いからね・・・」

確かに、よくよく考えると、角宿が亢宿の方を見るといつも眩しかったのだ。
つまり、角宿から太陽は亢宿を挟んだ位置にずっとあった、と言う事だ。

「何でそんな事したんだよ?!いくら兄キでもそれじゃあ日射病に
なるよ!!俺の事なんか気にしなきゃ良いのに・・・」

角宿は自分の事が許せなかった。

いつまでも亢宿に心配ばかりかけて・・・
そのせいで亢宿につらい思いをさせてしまった

そんな情けない自分が嫌になった

亢宿は両手で角宿の顔を覆った。
亢宿の体温を感じる。

「そんなに自分を責めないで、角宿。僕が勝手にしたことなんだから・・・」
「でもっ!!結局は俺の体が弱いからだろ?!俺のせいで・・・」
「良いんだよ、僕は・・・。それに・・・・・」

亢宿は角宿の事をにっこりと見つめた。

「弟を、いや、僕の大切な恋人を守るのは、当然の事だろ?」
「っな///!!!」

角宿の顔は一気に真っ赤に染まった。

「可愛いな、角宿はv」
「兄キっ!!第一、恋人って?!」
「女の子は陽射しに弱いって言うしねっ」
「俺は男だよ!!」
「でも、役的に僕が男でしょ?」

役、つまり夜の関係の事を言ったのだろう。
角宿はそれがわかるとますます顔を赤く染めた。

「角宿は僕の可愛い恋人vだから、僕がしっかる守らなきゃね。
・・・だから、今日の事は気にしちゃ駄目だよ?ね?」
「うっ・・・・・ぅん・・・」

亢宿からはっきりとこういう事を言われてとても恥ずかしかった。
でも、やはり嬉しさは隠せない。

『俺は、兄キにこんなに愛されてるんだ・・・』

そう思わずにはいられない。

「兄キっ、今日は俺が寝ずに看病するからねっ!!」
「だったら寝台の上が良いなv」

角宿の顔が今度は限界、と言う所まで赤くなった。

「兄キは病人なんだからね!?」
「角宿に看病されたらすぐに直るよv」

さすがに呆れた

角宿の熱い1日はまだまだ続くようであった・・・・・











  ☆管理人からのコメント☆

やった〜!!!
終わったよ!!
ってか・・・・・、遅っ!!!
7/31に終わらせたイベントの受賞者(?)へのお祝いだったはずが、もうその次にやったイベントも
終わっちゃってるし(・・;)
8月はフリー配布小説とか色々やってたから←明らか言い訳・・・(−−;)

でも、まぁまぁ思い通りに書けたかな(^^;)
のりちゃんのイラストを挿絵にした小説って事で書き始めたんだけど・・・
私としては、イラストから亢宿のちょっと強引さが見えた気がして、それにこだわってたら中々キスシーンに
持っていけなくて・・・
最終的にはちょっと強引になっちゃったよ(^^;)
ってか、亢宿のキャラが壊れてる気がする・・・
亢宿がこんな積極的だなんて・・・
あぁぁぁ〜〜〜!!!!!
もうそういうツッコミは無しでお願いします(>_<)

なんか、のりちゃんのイラストを飾ってた期間は過ぎちゃったけど、改めておめでとうございました〜☆
のりちゃんとの共同作業なんて幸せすぎ〜(>▽<)
ありがとね☆
これで少しは元気になってくれると嬉しいなvv