1粒の雪の結晶を取るように


みんなとの旅が終わって3年。



井宿と翼宿は、この四神天地書に残された最後の七星士として、4大国の現状視察をしようと思い立った。

紅南国から初め、倶東、北甲、西廊の順で回り、年が明ける直前に紅南国に戻る、
という予定を立て出発した。



しかし、観光半分、未だ復興が難航している倶東国の各所で復興支援をしていたためか、
予定より道程は進まなかった。

そして、ようやく着いた北甲国で、2人は年明けを迎えようとしていた。





「・・・はくしゅんっ!

 はぁ・・・本来なら、今頃は紅南で暖かい年越しを迎えてたはずやったのに・・・
 北甲は寒すぎるんや!!」
「そう言うななのだ、翼宿〜
 まさか、あれほど倶東の復興が進んでないとは思っていなかったのだ
 『視察』って言って回っているのだから、あの状態を無視して行くことはできないのだ〜」
「なんで俺たちの邪魔した青龍の奴らの守るはずやった国の復興を俺たちが手伝ってやらなあかんのや?!
 ほんま、むかつくで〜・・・・・っくしゅんっ・・・」

翼宿は寝台に座ると布団を羽織り、鼻を啜った。
いつも元気な翼宿も、寒さには弱いらしい(笑)

井宿は、そんな翼宿に
「これで暖かいのだ。」
と言いながら自分の上着をかけてやる。

旅費を節約するため、あまり良いとは言えない宿に泊まっている為、時たま隙間風が入り込むのだ。


「・・・あぁ、すまんな井宿。・・・はっくしゅんっ」
「ホントに大丈夫なのだ、翼宿?」
「あっあぁ・・・俺は絶対に風邪なんかひかへん!」
「あぁ、馬鹿は風邪を引かない、というやつなのだ?」
「うるさいわっ!!」

井宿はくすっと笑うと翼宿の隣に座った。



「・・・・・、もうすぐ、年が明けるのだ」
「そうだな・・・・・
 思えば、朱雀七星士として旅立ってから、長かったな〜」
「オイラたちが深く愛し合ってからも、なのだv」

翼宿からものすごい速さのげんこつが井宿の頭へ飛んだ(笑)

「いったいのだ〜オイラはホントの事を・・・・」

今度は鉄扇を構えたが、今度はその腕は井宿にしっかり押さえられてしまった。
さっきまでとは違う、真剣なまなざしが翼宿を捉え、翼宿はすっと視線をはずした。
しかし、井宿は片手でいとも簡単に翼宿の手首を纏め上げると顔を自分の方へと向けさせた。


「本気なのだ・・・。オイラは、翼宿に会った時から、翼宿を愛しているのだ・・・
 この愛は絶対に、これからも変わる事はないのだ・・・」


そう告げると、井宿は翼宿にそっと口付けた。



「翼宿も、オイラのこと、愛してくれているのだ?」
「・・・・・・・・・・」
「翼宿?」

翼宿は再び視線を井宿からはずすと、ぽつりと言った。


「・・・・・・・俺で、ええんか?」
「・・え?」
「俺かて、その・・・・・、井宿を、あ、愛してる、で・・・・・」

真っ赤な顔で一生懸命そう告げてくれた。

「ありがとうなのだvたす・・・」
「せやけどな!」

翼宿はすっと井宿の方を見ると言葉を遮るように言った。

が、そこにある井宿の真剣なまなざしに再び視線を逸らす。


「せやけどな・・・、せやけど・・・・・
 俺、たまに思う時があるんや・・・」
「・・なにをなのだ?」

「・・・・・・・
 井宿が、俺をあ・・・、愛してくれてるんはわかっとるんや・・・
 せやけどな・・・・・

 俺で良いんか?」
「・・・・・・・え?」

井宿には、翼宿の言わんとしている事がいまいちわからない。

翼宿は、必死に言葉を選びながら言った。


「俺は井宿が大好きで・・・
 井宿は、俺のことを好きでいてくれて、俺はすっごく嬉しいんや・・・
 いつまでも一緒にいよう、そう言ってくれて、ホントに嬉しいんや・・・
 せやけどな、ホントに、ホントに俺なんかが、井宿の隣にずっといてええんかって、
 俺なんかより、ずっと良い奴の方が、井宿に合うんやないかって、
 そう思てしまう時があるんや・・・・・・・・・・」



ようやく話し終えた翼宿は、唇を噛み締め黙り込んだ。

井宿は、なんと言えば翼宿に自分の気持ちがちゃんと伝わるのか、悩んだ。
でも、結論は出なかった・・・・・

その代わりに、と・・・・・


今まで以上に愛を詰め込んだ熱い口付けを翼宿に落とした


とその時・・・・・





ゴ〜〜〜ン・・・・・・・ゴ〜〜〜ン・・・・・・・・・



年の明けた合図である鐘の音が鳴り響いた。


しかし口付けは、鐘の音が鳴り響いても、しばらくは止まなかった・・・







翼宿は、これでもかと言う位息を止めていたが、さすがに限界がきた。

必死に井宿に訴えかけて口付けを止めてもらった
懸命に息を吸うなか、翼宿は今の口付けの意味を尋ねるような視線を送る。


しかし、井宿はその視線を受け止めても何も言わず、更には翼宿の手首を開放し、
1人、窓辺へと歩み寄り窓を開けた。



外の世界には、はらはらと、粉雪が舞い降りていた



「雪が降ってるのだ、翼宿・・・・・」


先ほどの視線の意味がわかっているであろうに
それに答えない井宿に、翼宿は不安を感じながらも、すっと窓辺に歩み寄った



「綺麗やな・・・・・」
「そうなのだ・・・・・・・・・・」



しばらく、2人は舞い落ちる粉雪に見とれていた。

雪のせいもあってか、無音の世界が2人の周りを包んでいる。





数分して、そんな沈黙を井宿が破った。



「翼宿・・・オイラは、粉雪が沢山降りしきる中からこうやって・・・」

と、ふっと窓の外に手を差し伸べて1粒の粉雪を捕らえる。

「1粒の雪の結晶を取るように・・・
オイラが生まれてきてから出逢ってきた、何千人という人の中から、自分の隣にいてほしいのは翼宿だと、そう思ったのだ。

 だから・・・、もっと、自信を持つのだ・・・・・」


井宿を見つめていた翼宿は、その言葉の意味を理解すると、すっと視線を逸らした。
しかし、井宿に見える範囲では、翼宿には、さっきまでの苦しそうな表情は伺えなかった。

井宿は、静かに翼宿の肩に手をかけると抱き寄せた。


翼宿は鼻をずっと啜ると

「へへっ、まったく根拠なんかないやないかっ」

と必死で笑ったような声でそう言った。
井宿も微笑みながら

「あぁ、根拠はないのだ。でも・・・・・・・

 オイラは本気で、そう思ってるのだ・・・・・」


そう告げた。



翼宿は

「そか・・・・・」

とだけ告げると、井宿の胸に顔を押し当てるように井宿を抱きしめた。

それに答えるように、井宿も、翼宿のことを力強く抱きしめる。








2人の間に、再び無音の世界が広がる

しかし、その世界は、どこか暖かみを含んで、2人を包み込んでいた・・・・・・・





『願わくば、これからも共にあらんことを・・・・・』











  ☆管理人からのコメント☆

皆様!A Happy New Year★☆

お久しぶりであります(^^;)
なんとか年明けFDLを実施することが出来ました〜!!
といっても・・・・・
年明けから暗いねぇ(爆)
これしかネタ上がらなかったんです・・・許してやってくだせぇ><
でも、久しぶりの割には2時間って言う短時間で仕上げられました〜(笑)
結構すんなり文が思いついたもんで(^^;)
いやぁ良かった良かった(笑)
ネタの時点で結構はっきりしてたからかな〜w
このネタは、レミオロメンの「粉雪」の歌詞の所々から作りました
ようは・・・何千人と言う人の中から君を選んだんだよ、と(歌詞の一部をちょいと変えた物です)
そういう事を書きたかったのであります(^^;)
それを、やっぱり題名どおり粉雪にちなんで書きたかったから北甲で〜って事にしたくて、更に年明けの瞬間にしたくて
そして、北甲に行くには・・・と試行錯誤した結果、前半の導入ができたわけです(笑)
ネタの時点では初めと後半しかなかったから、前半はどうしようかとマジ悩みました(^^;)
でも、やっぱり久しぶりに小説書けて楽しかったですvv

そして!!
こんな小説ですが、忙しい亜紀からのささやかなお年玉でありますw
1日0時から7日の23時59分59秒(こまかっ!)までにBBSに(できたら感想を添えて)ご報告してくださった方にのみ!!
FDLOKとさせて頂きます^^
こんな小説ですが、貰って下さるととっても嬉しいです★☆
なんだか本格的復活したらかなりなよろずサイトと化しそうなこのサイトですが(爆)
やはり年始めはちちたすからvv

これからも頑張りますので、どうぞよろしくお願いします〜(≧▽≦)