狐の嫁入り伝説



この世には不思議な言い伝えが幾つもある

これは、四神天地書にのみ言い伝えられた話

その名は・・・


『狐の嫁入り伝説』



ある晴れ渡った日の午後

井宿と翼宿は宮殿内にある池のほとりに座っていた。
翼宿は井宿に寄り掛かっている。


「翼宿?」

井宿は寝ているかもしれない、という配慮のもと、静かに問い掛けた。

「なんや?」

返事が返ってきた。

「翼宿、狐の嫁入り伝説って知ってるのだ?」
「いや、どういうやつなん?」
「えっと・・・」

続けて井宿は静かに語り始めた。



それは、今より更に500年程前の時代だと言う。

ある村に2人の男女が住んでいた。

だが、2人は決して結ばれぬ身であった。


「なんでや?」

子供がお話を聞いている時ように、翼宿は興味津津な顔をしている。

「それはなのだ・・・」


女の方は大地主の1人娘
それに対して、男の方は小さな土地しかない、貧しい家の末っ子
いわゆる、身分の違いがありすぎた。


「そりゃ偉い違いやな・・・」
「そうなのだ。女の方の親は、もちろん一人娘なのだから自分の財産を
継がせたいのだ。相手だって、それなりの身分の人が良いと思うのは
当然なのだ。」
「せやな・・・で?」
「それで・・・」


2人の仲はもちろん秘密であった。
しかし、秘密はいつかばれてしまうもの
女の親は男に2度と娘に会いにくるな、ときつく言った。

女は泣いて頼んだが、親は許してくれず、男は追い出された。


「ひどいな・・・」
「でも、これは今もよくある話なのだ・・・」
「俺は嫌やで、好きな奴と離れるなんて!」

井宿が翼宿の髪を梳く。
そのまま話を続ける。


それから、何日も何日も、男は女の家へ行ったが、門前払い
女も、何度も家を抜けだし男に会いに行こうとしたが、いつも親に
見張られていて無理であった。

女の親は早速とばかりに婚約者を決めてしまった。


「そりゃ勝手やで!許せん奴や!
んで、どうなってまうんや?!」


女は毎日泣き続けた。
その事を知った男もたいそう焦った。

そして婚儀の日、まだ会った事もない男
しかし、女には諦めるしか道がなかった・・・。

いざ準備が進められ、女も着替えなどに取り掛かった。

いよいよ男と対面の場になってしまった。
女は、やはり男の事を忘れられなかった。
何度も心の中で叫んだ。
『嫌っ、私はあなたと一緒になりたい・・・』

と・・・


「っく・・・」
「翼宿、泣いてるのだ?」
「可哀相やん、その女・・・。
はっ、速う先話してや・・・」


女は何度も、強く叫んだ。
その時・・・

女の横の窓から人が入りこんできた。
みな何事かと驚いている。
その隙に、その者は女の手を取ると、外へ連れ出した。
なんと、その者は、女が愛したあの男だったのだ。


「おぉ〜まさしく救世主ヒーローや!カッコええで〜!」


2人はなんとかして外へ出たが、すぐ後からは親たちが追いかけて
きている。
それでも、2人は諦めなかった。
出来る限り逃げた。

しかし、2人は追いつめられた
行き着いた先は、大きな池のほとりだった

追っ手はすぐそこまで来ている
2人に逃げ場は残っていない・・・


「え〜どうないなるんや?!」


2人は、離れる決意を固めたのだ。

「ごめんな、俺が不甲斐無いせいで・・・」
「仕方ないわ・・・あなたのせいじゃないわ・・・。
私たちも、これまでね・・・・・愛してたわ・・・」
「俺もだ・・・・・」

2人は、最初で最後の口付けを交わした。

その時、2人の上を雨が降り注いだ
しかし、紛れも無く、空は綺麗に晴れ渡っていた。
雨粒に、日の光が反射して、あちこちでキラキラ光り輝いている。

「狐の嫁入りね」
「そうだな・・・」
「すっごくロマンチックね」
「最初で最後の口付けが、こんな素敵だなんて・・・。俺、もう死んでも
良いや」
「ふざけた事言わないでっ。お互い、幸せになりましょ。離れていても、
心は1つよ・・・」
「あぁ・・・」

追っ手が追いついてきた。
みなが2人を見つめていた
2人の周りは、何故か光輝いているように見えた。

「ごめんなさい、お父様・・・。私はその方と、結婚しますから・・・」

女は、愛する男の元を去り、親の元へ戻ろうとした。


「マジでか〜!?おい井宿っ?!」
「まぁまぁ、まだ続きがあるのだ・・・」


女は一歩一歩と男の元を去っていった

「まてっ」

女の親が突然声をかけた。
逆に、親の方が女の元へ歩み寄る。

「お前、そんなにあの男が好きなのか?
お前も・・・」

そう言って、女の親は男にもそう問う。

「えっ、えっと・・・」
「はい、私の愛する人は、この人だけです・・・
でも私は・・・」
「お前はどうなんだね?」
「俺は・・・、俺は、この人をあなたの娘さんを、愛しています。」
「そうか・・・」

女の親は、一瞬考え込んでいたようだが、改めて、2人の顔を見つめた。

「そんなに言うなら・・・、もうお前たちの好きにしなさい・・・」

「本当に良いんですか、お父様?」
「あぁ、お前の好きにしなさい・・・骨のある男のようだしな。
お前の事を毎日尋ねてきおって、まったく・・・」
「あ、ありがとうございます!!」

2人は駆け寄るとお互いを抱きしめた。

そして、雨の中、2人はもう一度固く口付けあった。

今度は、2度と離れないと誓い合った・・・


「これが、狐の嫁入り伝説の内容なのだ」
「なんや、めっちゃ素敵やな・・・」
「最後、幸せになれて、本当に良かったのだ・・・」
「せやな・・・」

2人は目の前の池を見つめた。

「俺らも・・・」
「ん?」
「幸せになれると良いな」
「もちろん、なれるのだ・・・」

その時、突然雨が降ってきた。

「あれ?」

良く空を見ると・・・

「晴れとるで?」
「本当なのだ・・・」

2人が空を見上げると、確かに太陽はしっかりと顔を覗かせている。
陽射しが痛い位だ。

2人は、お互いを見つめた。

「なんだか、伝説の中に入ったみたいなのだ・・・」
「じゃあ、俺たちでもう1度伝説を起こすか?」
「それは良いのだ・・・。
もっとも、オイラたちの間に、そんな伝説なくても大丈夫なのだ・・・」
「ロマンチックじゃない奴やな〜」

ふっとお互い笑う。

その後に待つのは、伝説の中の2人のような、熱い口付け





伝説が、また繰り返されるのか

それは、これからの2人次第・・・・・











  ☆管理人からのコメント☆

皆様、サイト開設半年、見事向かえる事が出来ました〜☆
もう感動です(*^−^*)
なにせ、管理人がサイト開設日をしっかりメモってないなんて適当な人間なので・・・
なにわともあれ、皆様!本当にありがとうございます!!

さて、このネタはつい最近書きたいなぁと思ったもので、7お題の時にどれかでUPしようかと思ったのですが、
結構甘くて良い感じになりそうだったので、プレゼント用にしたのです☆
とはいっても、書き上げたら2人のシーンが全然ないんですよね(^^;)
もう1つ、2人がこの伝説を作った、という事でも良いかなぁなんて思ったのですが・・・
やっぱ止めました(^^;)
ほんわかした感じなって、なんか嬉しいですw
あっでもちなみに・・・この伝説は管理人がでっち上げたものですからね・・・?!(^^;)

にしても、良く考えると私8日間連続で小説書いたんですね(^^;)
私って、凄いなぁ(爆)

これからもこんなサイトですがよろしくお願いします☆