束の間の休息に・・・



これは、井宿が翼宿にまだ自分の気持ちを言う前のお話・・・・・。





星宿を除く朱雀七星と美朱は、明日から北甲国へ神座宝を探しに行く事に
なっている。
そんな翼宿と井宿は、旅に出る前の束の間の休息を2人で一緒に町へ出る
事にした。

「さぁ出かけるのだ!」
「お〜し、今日は遊びまくるで〜!それで食いまくるっ!」
「翼宿張り切ってるのだぁ」
「あたりまえや!今日休まへんかったら、もうしばらく休めへんやで!
今日遊んどかんと!」
「そうなのだ?」
「そうや〜!ささ、早う行くで!」
「まったくなのだぁ。わかったのだ。」
「さぁ食うで〜!!!」

そう叫ぶと翼宿は井宿の肩に手をかけ街へ進み出した。

肩に手をかけられていると言う事は、つまりは体が密着している事になる。
そんな状態なのだ、井宿は冷静でいられるはずもない。

『たたた、たすきっ!オイラを誘ってるのだ?!誘っているのだ!?
でもでも翼宿はオイラの気持ちを知らないし、翼宿がオイラと同じように
思ってくれてるはずもないのだ。
ここは堪えるのだっ、井宿!』

井宿はいつもの事ながら翼宿の無意識の誘いに心の中でつら〜っい葛藤を
していた。

翼宿はいつも井宿を無意識に誘っている。
もちろん翼宿は気づいていない。
本当に翼宿は鈍感である・・・。

しかし、翼宿には井宿に「好き」、という感情を持っているはずもない。
だから、井宿は余計困るのである。

『あ〜、この気持ちは言えないのだ、駄目なのだ〜!』

こんなの事考えている井宿は考えるのに没頭している。
そんな井宿に気づかない翼宿は、井宿を引っ張るように街の中を
進んでいった・・・。



「たすきぃ、昼から飲みすぎなのだ〜。」
「じゃかし〜いんや!ええやんか、井宿ももっと飲めや!
お〜おっちゃん!もっと強い酒頼むで〜!」

翼宿は井宿と街を歩き回った後、この店に来てもう3時間も飲みっぱなし
なのである。
井宿は気が気でない。

「翼宿、飲みすぎなのだ〜。ほら、帰るのだ!」
「今日は遊んで食う決めたやんけ!今日は潰れるまで飲むで〜!」
「駄目なのだ〜、翼宿〜!」
「ええやろ〜、さぁもっろのむれ〜。」
「翼宿っ!?もう舌が回ってないのだ〜。今日はもう帰るのだ〜。」
「まらまらいくれ〜、てあ、れ?なんや眠ろなっれきら・・・。ちちっ・・・」
「翼宿?!」


・・・ドサッ

「翼宿っ!どうしたのだ!?たすきっ!」

スー、スー・・・

翼宿は珍しく飲みすぎたのか井宿に倒れ掛かったのだようだ。

「良かったのだ、眠っただけだったのだ・・・。でも、あれほど
言ったのに、こんな強い酒をこんなに飲んだら誰でもこうなるのだ〜。」

そう言いつつさっきまで心配していたのはどこへやら、井宿はとっても
嬉しそうである。

『だ〜翼宿の寝顔、可愛いのだ〜。こんな所じゃなければ襲って
しまいたいのだ〜。』

などと、また不謹慎な事を考えているのであった。

翼宿はまた無意識に井宿を誘ったのである。
寝ているのだから当たり前ではあるが・・・(笑)。
と、その時井宿はハッと思いついた。

『そうなのだっ!こんな所でこうしていたら翼宿が襲われてしまうのだっ!』

他に男を襲う趣味のある奴などいないであろうに、井宿はとっさに
こう考えた。
第一、井宿がいるのだから襲われたとしても、逆にそいつは返り討ちに
合うだろう・・・。
だから翼宿は無事であろう。

それに・・・、襲う可能性が1番あるのは、なんと言っても今の井宿であろう・・・。



まぁそれはさておき、結局井宿はこの食堂の部屋をしばらく1つ借りる
事にした。

「お酒に強い翼宿の事なのだ。夜までには目を覚ますのだ。それまで
寝かしておくのだ。」

そういう結論に達したのであった。

しかし、こんな事を考えてはいるが、井宿は単に翼宿の寝顔を見て
いたかっただけなのである・・・。

井宿は翼宿をベッドに寝かすと上に布団を掛けてやった。

「それにしても・・・・・、本当に可愛いのだぁ。」

井宿は翼宿の寝顔を見ると無意識にまたこう言っていた。
本当に惚気である・・・。

でも、確かに翼宿はとても穏やかな顔で寝ている。
よっぽど良い夢でも見ているのであろう・・・。
たまに寝言らしきものも聞こえる。

井宿はしばらく翼宿の寝顔を眺めていた。
すると、また井宿の心の中では葛藤が起こる。
『だっ、駄目なのだ!いくら寝ているからと言って・・・。
第一起きてしまったら・・・。』

井宿はまだ自分の気持ちを言ってないのである。
そして、翼宿を困らせたくないが為に、これから先も言うつもりは
なかった。
だからバレるのはとてもまずいのである。

しかし、今の井宿は自分を完全に止める事は無理に近かった。

『きっ、キス位なら起きないのだ・・・。』

もう井宿は自分を制御不可能である・・・。

『だっ、第一翼宿が倒れるまで飲み過ぎるのが悪いのだ。倒れたのを
支えたお礼を貰っても構わないのだ。』

などと、井宿は自分の行動に勝手な理由を取り付けた。



井宿はそっと寝ている翼宿に口付けをした。
2人の間では初めての口付けであった・・・。

随分長い間唇を重ねあっていた。
井宿はとても幸せを感じていた。
何せ、一生叶わないと思っていた事が今出来たのである・・・。

井宿の方は嬉しさですぐに息が上がってくる。
翼宿も、寝ているだけあって、段々無意識に空気を必要として呼吸を
いつもより沢山しようとしている。

井宿は翼宿が起きてはいけないと思い、翼宿の唇から自分の唇を離した。
翼宿は1度深く息をすると、また規則正しく寝息をたてていた。

「今日はありがとうなのだ、翼宿・・・。」

そう一言言うと、お礼の意味を込めてまた軽くキスをした。
その時・・・

「・・・、ん・・・井宿ぃ・・・」
「えっ?」

井宿は一瞬翼宿が起きたのかと思った。
しかし、寝息を立てているのを聞き、まだ寝ていのだとわかりホッとした。

『たすきぃ〜。寝言でオイラの事呼んでいたのだ〜!』

翼宿はまた無意識のうちに(笑)井宿を誘ったのである。
今までキスをしていて体が熱くなっていて、更に相手は無防備状態、
ときたのだから井宿にはもうたまらない。
そして、井宿を止めてくれるものは何もない・・・。

『オイラは一体どうしたら良いのだ〜!!』



今日は1日中翼宿に悩まされる井宿であった・・・。











  ☆管理人からのコメント☆

初めてのキリリクの小説です!しょう様に捧げますっ!
いやぁ、リクエストは「井→翼の妄想片思いストーリー」と言う事でしたが、なんか違ってしまった気が・・・。更に
短い・・・。
しょう様、本当にすみません(;;)

私としては、また翼宿が無意識のうちに井宿を誘いまくって(笑)井宿が翻弄される、というつもりで書きました
(って、そのまま・・・)。
ご期待に沿えてなかったらすみません・・・。

では、改めまして200HITおねでとうございま〜す!!!