飲みすぎにご注意を



「「「はぁ?!」」」
「これからみんなで飲みに行かへんか?」

旅の途中のある日、井宿と翼宿はたまにはみんなで羽を伸ばそうと
思い、食事に行こうと考えたのである。

「すみませんが、僕は今日中にしなくてはいけないことがあるので・・・。」
「俺も久し振りに薬草を採りに行こうと思ってたから。」
「私もまだ政務が残っているし、第一、皇帝が簡単に外に出ては
まずいからな。」

張宿に軫宿・星宿に次々と断られてしまった。
翼宿はそろそろキレ始めそうになっている。

「わっ、わりぃ。俺も今日はちょっと・・・。美朱と出かけようって
約束してるからな。な?」
「そっ、そうなんだ・・・。ごめんね、翼宿。確かに食べ物が
食べられないってのはすっごく悲しいけどね。」
「おいっ!お前はいっつもそんな事ばっか考えてるのか?!」
「だって、しょうがないじゃないっ!どうせ食べるのが好きですよ〜だ。」

美朱と鬼宿は最初の話題も忘れてさっそく夫婦漫才(笑)を繰り広げている。
翼宿はだんだんキレてきた。

「結局お前らは来ないんやなっ、えっ?!」
「だ、だからわりぃって言ってるじゃねぇか!」
「ごめんね、ホントに食べれないのは悲しいけど・・・」
「お前まだ言ってるのか?!まさかっ、お前約束破る気じゃ・・・」
「だから、ちゃんと行くって」

翼宿はもうキレる寸前である。

「柳宿は来れるんやな、えっ?!」
「私は行かないわよ。」
「へっ?」

翼宿がいまにも暴れ出そうとした時、柳宿はそっと耳打ちした。

井宿と2人で行ってらっしゃいよっ。恋人同士でね。

なっなな何言うとるんや〜!?

翼宿は起こってた事も忘れて今度は顔を真っ赤にしている。

井宿はこのやり取りを一部始終見ていたが、翼宿の表情の移り変わりを
見て、1人で喜んでいた・・・。
さらに、みんな行けなくなって翼宿と2人で行く事になりそうだったので
もうウキウキである。

『オイラ、ラッキーだったのだ〜♪』


「翼宿っ?一体どうしたんだ?」
「えっ、いやっ何でもあらへん。」
「やっぱ怒ってるのか?」
「えっ?なんの事や?」
「えっ・・・?」

もうみんなわけがわからなくなっている。
全てを理解しているのは、柳宿と井宿だけである。

「ホント今日はわりぃな。」
「すみません・・・。」
「えっいやっ、ええで。井宿と2人でなんか食べてくるから大丈夫や・・・」
「そっそうか・・・。じゃあ俺たちも出かけるかっ!」
「オイラたちも行くのだ、翼宿。」
「あっああ・・・」

翼宿は半分上の空のようだ。
井宿はそんな翼宿に微笑むと井宿は柳宿に耳打ちした。

サンキュウなのだ、柳宿。
別に良いわよ。でも、せっかく機会をあげたん だから酒に酔った事にして押し倒す位しちゃいなさいよっ。
それは良いのだ。ありがとうなのだ。
しっかりやるのよ。

井宿はもうやる気満々である(笑)。

「それでは行ってくるのだ〜。」

井宿はにこにこでそう言うと翼宿を引きつれ宮殿を後にした。



「翼宿、食べないのだ?」

翼宿はこの食堂についてからというもの、ずっと黙って食事にも手を
つけないでいる。

「一体どうしたのだ?」
「いや、やっぱみんなで来たかった思てな・・・」
「翼宿・・・」
「せっかく最近平和なんやし・・・。」
「しょうがないのだ。平和で何もないときだからこそ自分のしたい事を
みんなしたいのだ。」
「せやかて・・・」

翼宿はどうしても納得できない。

「よし、今日はさっきの事忘れるまで飲むのだ〜!」
「へ?」
「さあ飲むのだ!すみませんなのだっ!この店で1番強い酒を貰いたいのだ」
「ちっちちり?!」

井宿は出てきた酒を2人分注いだ。

「翼宿も飲むのだ!」
「えっえっ・・・。」

戸惑う翼宿に井宿は無理やりコップを持たせた。

「かんぱ〜い、なのだ!!」
「ええっ?!」
「翼宿も飲むのだっ!」
「そっ、そやな。今日はおもいっきり飲むで〜!」
「おうなのだ〜!!」

そう言うと2人は、この店1番の強い酒のビンを凄いスピードで空けて
いった。



2人はどんどん飲んでいく。
しかし、いくらお酒に強い2人でも、この店1番の強さの酒をたくさん
飲んだのである。
そろそろ2人とも様子がおかしくなってきた。

「お〜、なんか気持ちようなってきたで〜。お〜い井宿、もっと飲むで〜。」
「・・・・・。」
「ん?井宿、一体どない・・・」
「帰るのだ。」
「なっ、なに言うと・・・」
「なんでも良いのだ!とにかく帰るのだっ!」

そういうと井宿は酔っているのかふらつきながらも帰り支度をしている。

「なに言うとるんやっ!?まだ存分に飲んどらんやんか!っておいっ!」

井宿は翼宿を無理やり引っ張り、勘定を済ませると店を出た。

井宿は翼宿が騒ぐのもお構いなしに無言で歩き続ける。
道はだんだんと人気のない方へ進んでいく。

人気のまったくない道まで来ると、突然井宿は歩みを止めた。

「一体どないしたんや?!酔ってんのか?」
「・・・、酔ってなどいないのだ。」
「なに言うとる、んっ・・・」

井宿はいきなり翼宿に口付けた。
翼宿はとっさの事に驚いて、井宿を跳ね除けようとしたが、お酒を
飲みすぎたせいか、力が入らない。
体はどんどん熱くなる。

井宿のいやらしい手が翼宿の体をあちこち撫でる。
翼宿は思わず口付けの間から艶のある声を発していた。

「っはぁ!・・・、んっ・・・ちちっ・・・。」

2人はしばらく息を落ち着ける。
そして井宿が口を開く。

「お前を抱きたいのだ。」
「んなっ!なに言うとるんや!ここ外やで!しかもまだ昼なんやで!」
「関係ないのだ。オイラは今、翼宿を抱きたいのだ。」
「だからってここじゃなくてもええやろ?!」
「そうなのだ・・・。そんなに帰りたいのなら帰るのだ。ただし、
なにもしてないで帰るのは嫌なのだ。」

そう言うと、井宿はどこから出したのか白い布で、翼宿の視界を封じ、
後ろ手に縛った。
更に、その翼宿を抱きかかえた。
井宿はさすがにこれを見られるのはまずいかと思い、後ろ手に縛ったのは
見えないように抱いた。

「ななっ何するんや!ほどけっ、井宿!」
「だって、翼宿は外で抱かれるのは嫌なのだ?だから、翼宿からは
見えないようにしたのだ。大丈夫なのだ。」

井宿はゆっくりと歩き出す。
わざとゆっくりに・・・

「なにやってるんやっ!さっさと歩かんかい!」
「嫌なのだ。お酒が回ってきて倒れそうなのだ。」
「だったら俺の事放せばええやん!」

翼宿は井宿の上で暴れるものの、井宿にはかないっこない。
2人は人通りの多い大通りに出た。

「暴れないのだ。そうしないと・・・」
「んふっ・・・!」

井宿は大通りのど真ん中で翼宿に口付けた。
通りかかった人は驚いているが翼宿にはもちろんわからない。
井宿は、そんな事お構いなしである。

「んっ・・・!」

更に、器用な事に井宿は翼宿の体を撫で始めた。
井宿は翼宿の感じやすい所ばかりを撫でる。
お酒で熱くなっているうえ、見えてはいないが往来でこんな事をされて
いるのだという事を意識するあまり、更に体が熱くなっていく。

井宿は翼宿の体温が上がっていくのを感じ、更に歩速を緩めた。

息もどんどん上がってくる。
往来の人々はもう目が点である。

そして、井宿が事もあろうに、翼宿の上半身の服を脱がせにかかろうと
した時・・・

「皇帝のお通〜り〜!!!」

どうやら星宿が巡遊をして回っているようだ。
家来の声が道中に響く。
さすがの井宿も危機感を感じた。

「しょうがないのだ。続きは宮殿でなのだ。」

と言うと、袈裟を広げ、2人の姿はさっと消えた。





次の日・・・

「翼宿〜、なんでそんなに怒ってるのだ〜?」
「知らん」

2人は中庭にいた。

「なんなのだ〜。教えてほしいのだ〜。オイラ、なんかしたのだ?」
「・・・お前、昨日の事覚えとらんのか?」
「昨日?・・・そういえば、2人でお酒飲んだ後の記憶がないのだ。」
「あんな事したんに、覚えとらんのか・・・。もう知らん。」

そう言うと翼宿は井宿に背を向ける。


昨日のあの後、2人は宮殿の井宿の部屋に入ると、昼間からあの続きを
ずっとしていた挙句、全てが済んだとたん、井宿は寝入ってしまった
のである。
翼宿はさんざん井宿のわがままに付き合わされたのである。
しかも、それを井宿は何も覚えてない、ときたのだ。
怒るのも無理はない。

「たすきぃ〜。」
「ねぇねぇ、ちょっとあんたたち聞いてよ!」
「なんなのだ、柳宿?」
「昨日の事なんだけどね。昨日あんたたちが出かけた後星宿様が巡遊に
出られたのよ。その時に聞いたらしいんだけど、なんか昼間っから大通
りでいちゃついてるカップルがいたんだって。1人がもう1人を抱いて
たんですって。しかも、どうやら男同士だったらしくて、片方は目隠し
されてたみたいらしいの。
凄いわよねぇ。もう街中の噂よ。いい度胸だと思うわ。でも、男同士で
そんな事する奴なんてそういないだろうし・・・。あっ、もしかしてあ
んたたちじゃないわよね?」

柳宿がさんざんまくし立てている間、翼宿の表情はみるみる真っ青に
なっていた。
柳宿はその異変に気づく。

「あれっ?もしかして図星だったの?いやねぇ、あんたたち!朱雀七星
として恥ずかしいじゃない!それに井宿!いくらなんでも私がアドバイス
したからって大通りはまずいわよ。」
「そそそ、そんな事しとるわけあらへんがな!なっなぁ井宿?!」

翼宿はもうごまかす事ばかりに夢中で柳宿の「アドバイス」という言葉は
耳に入っていなかった。
井宿も、いまの状況把握に精一杯である。

「そうなのだ?オイラ覚えてないのだ。」
「そうに決まっとるがな!」
「ふ〜〜ん。」

柳宿に言い方はいかにも納得してないようである。

「まぁ、良いわ。そ〜だ!この事美朱にも言ってみよっと!」

そう言うと柳宿は足取り軽く中庭を去っていった。

「翼宿、もしかして・・・・・?」
「もう井宿なんか知らんっ!」
「ホントにそうなのだ?オイラそんな事やってしまったのだ?!」
「もう一生知らん!」
「たすきぃ〜〜〜!」





その後、翼宿は1ヶ月もの間井宿と口を聞かなかった・・・・・。













800HITを踏んで下さったみずち様へ!おめでとうございます!
あっ、ちなみにこの前もリク作品を書いたのは、今回とは理由が違いますから(^^;)今回のは、あくまで
キリリクですから(^^)

にしても、みずち様に「外にお酒を飲みに行く」というリクエストを頂き、あれこれ悩んだ結果、こんな話になって
しまいました。
にしても、井宿が非常識すぎるのです!これはさすがにまずいでしょうか・・・?あ〜どうしよ・・・。
しかも、井宿お酒飲んで性格変わりすぎでした。ホントはお酒に強そうなのに・・・。イメージ狂ったらマジすみま
せん(;;)

いやぁ、リクエストに合わせるのは大変です(^^;)
・・・、あっ愚痴ってすみませんっ!
リク作品書くのも好きですよ!

それでは、改めてみずち様、おめでとうございます!
これからもよろしくお願いしますっ!