思いは胸に秘め・・・



ガシャンっ

「なにっ?!」

パリ〜ン、ガシャ〜ンっ

「これはっ・・・倶東の矢だ!
多喜子、逃げるぞっ!!」
「えっ、ちょっちょっと待って・・・」

ガッシャ〜ン

「そうはいかない!!」
「くそっ・・・」



多喜子と虚宿はとある街で宿をとっていた。

色々な街へ行ったが、なかなか3人目の七星士が見つからなかった。
良い事と言えば、ここ最近は倶東からの攻撃もなく平和な毎日である
ことだけだ。

2人はちょうど部屋に入り落ち着いていた所だったのだ・・・



「逃しはしない!お前らは、ここで死んでもらう!」
「けっ、そうはいかね〜ぜ!」

虚宿は多喜子を自分の背に隠すように敵の前に立ち塞がった。

「覚悟っ!!」

倶東の兵士たちが剣を手に襲い掛かってくる。

「はっ!」

ピュッ、ドスッ

「うぎゃぁぁ〜〜〜!!」
「へへっ、ざまぁみろっ!」

虚宿は剣に対し、弓で戦う。
多喜子は動けないでいた。

最初は互角以上に戦えていた。
しかし、20〜30人vs1人であり、しかも剣vs弓の戦い
疲れも溜まってきたのであろう。
虚宿はだんだんと押されてきていた。

後ずさりしながらなんとか戦うが、ここは部屋の中、すぐに背中に
壁が触れた。

「くっそ〜〜!!」
「はぁぁぁ〜!!!!」

キィン

「たっ多喜子・・・?」
「わっ、私だって、戦えるんだから・・・!」

多喜子の手には倶東軍が持っていた剣が握られていた。

「私も相手になるわ!」
「巫女か、ちょうどいい。始末してやる・・・!」
「た、多喜子・・・よせっ!!」
「はぁ〜!!」

キィン

「くっ・・・」

覚束ない手つきで剣を振り回す。

「多喜子っ!!くっ・・・」

虚宿の方にも敵が襲い掛かってきて、多喜子の方へ行くのは難しい。
しかし・・・

「きゃぁっ」

多喜子は敵の攻撃に倒れこんでしまった。
虚宿は駆け寄ろうとしたが、次から次へと来る敵に、思うように動けない。

敵が多喜子の頭の上から切りかかろうとしていた・・・

「はぁ・・・!」

ヒュン

「うぎゃ〜!!!」

虚宿が間一髪で敵を弓で仕留めた。
しかし、自分に襲い掛かってくる敵が目前に迫っていた。

「覚悟っ!!」


殺られるっ・・・!!

虚宿が覚悟し目を瞑った、その時・・・

ビュウ〜、スパッ・・・ザっ

強い風が吹いたかと思うと、敵が風に切られ倒れていったのだ
急な事に驚き、虚宿は呆然と立ち尽くしていた。

その時、風の中をキラリと光るものが見えた。

それが剣だと悟った時には、もう避けるには遅すぎた。
剣先が目前で光る。

と、その時、何かが自分に覆い被さってきた気がした。

間一髪、虚宿は攻撃を食らわずにすんだ。


「うっ・・・」

誰かの呻き声が聞こえた。
兵士のものは違う、どこかまだ幼さの残る声

倒れこみながら、虚宿はその者の顔をぼんやりと想像していた。
そして、その時一瞬胸がドキッとした。
考えようと頭を働かすが、やがて深い闇に遮られた・・・



しばらくして風はやんだ。

風を起こした主が立ち上がる。
最初視界に入ったのは、倶東の兵の死体
そして、その目は次に気を失っている多喜子へと向けられた。

「まったく、慣れない剣なんかで戦って・・・。危ない奴だ。
それに・・・」

その者の視線は、もう1人のまだ幼さの残る顔をとらえた。

「なんで、俺はこいつを助けたんだ?・・・
まったく、わけわかんないぜ・・・」

「おいっ、中の奴らは大丈夫だったのか?!」
「もう大丈夫だろう・・・。入って確かめてみよう!!」

「やべ〜ここにいたら厄介な事になる。ずらかるか・・・」

その者、女宿は2人を担ぎ上げると風の中に消えていった。





「・・・うっ・・・ここ、は・・・?さむっ・・・」
「やっと起きたか」

ふと横を見ると、多喜子はまだ目を覚ましていないようだ。
次に、虚宿の視線が女宿をとらえた。
その途端、虚宿はガバッと起き上がった。

「りっ、リムドか?!なんでお前がここに?!」
「たまたま北甲の偵察をしていたんだ。そしたら、争いの音がしたから
駆けつけただけだ。」
「そうか・・・」

とその時、虚宿の目は女宿の腕のものをとらえた。

「お前、怪我してるじゃねぇか!!もしかして・・・あの時、俺に
覆い被さったのは・・・?」
「・・・・・」
「なんであんな事したんだ?!」
「・・・・・・・・・・」
「リムドっ!!」

沈黙が流れる。

「・・・、俺にもわからない」
「なんだと?!」
「音を聞きつけて覗いたらお前たちが戦ってるのが見えて・・・。
風を起こして兵士たちを倒したのは良いが、お前が突っ立ってて敵に
殺られそうになってた・・・。
それを見たら、勝手に体が動いたんだ」

また、沈黙が流れた。

突然虚宿は女宿の傍へ行く。
すると、腕へと手を伸ばす。

「いてっ、なにしやがるっ?!」
「手当てだよ、悪いか?!
俺のせいで、怪我したなんて言われたくないからな・・・」
「けっ・・・」

女宿はそのまま黙って手当てされていた。

「ぷっ・・・」

虚宿が急に笑い出した。

「どうしたんだよっ!?」
「いや、お前が大人しく手当てされてるなんて、なんかおかしく
なって・・・くくっ」
「なんだよそれ、おいっ!!」
「はい、終了っと」

手当ての終わった虚宿は再び元いた位置へと戻った。

「ったく・・・」
「あのぉ・・・」
「今度はなんだ?」
「・・・・・、ありがとな」

女宿は目を見開き虚宿を見た。

「なっなんだよ?!」
「俺・・・」
「は?」
「俺、きっと・・・」
「はっきり言えって!!」
「・・・、いや、なんでもない」
「はぁ?!」

女宿は自分の気持ちに気付いた。
まだ確信はない。
でも、きっと、そうなのであろう、と思った。


「うんっ・・・」
「多喜子?」
「さぁてと、俺はもう行くか。長居するとあいつらがうるさいしな」
「おっおい・・・」

再び風が吹いた。
風が唸る中、確かに声が聞こえた。

「また来いよな、女宿・・・」



「うんっ、虚宿・・・?」
「やっと起きたか。大丈夫か?」
「虚宿は大丈夫だったの?!」
「あぁ。リムドが俺たちの事助けてくれたんだ・・・」
「リムドが?!」
「あぁ・・・」

虚宿は女宿が去っていった方を眺めた。

「虚宿どうしたの?」
「いや・・・。
にしても、今日は野宿だな」
「え〜!!!」
「しょうがないだろ〜ったく・・・」

虚宿は女宿の事を考えた。

「俺が、俺が男を・・・?
ふっ、まさかな・・・」
「虚宿〜ご飯食べましょ〜!!」
「あいよ〜」


女宿は急ぎ足で宿営地へ戻っていた。

その中、先程との虚宿との話を思い浮かべていた。
言おうとして止めた、あの一言・・・

「ふっ、まさかこの俺が男を・・・?でも、この気持ちは・・・
あいつ、初めて俺の事、『女宿』って呼んでた・・・。いつもなら、
この名は嫌なのに、あの時は嫌じゃなかった・・・」

あの時、嫌と言うよりむしろ心がすっきりとした。
やはり・・・





俺は、あいつを好きになった・・・?











  ☆管理人からのコメント☆

できました!!
結局自分に鞭打って書きました(^^;)
というかネタは出来てたんですよね〜
でも、最初の書き出しが決まらず、ここまで引っ張ってしまいました・・・

女×虚、どうでしょう・・・?
なんか、こんなパターン前にも書いたような気が・・・
定パターンな奴ですみません(^^;)
でも、この2人がイチャイチャってのもねぇ〜
なんか、気付いたのに照れていえない!って感じじゃないですか?!
もうそれしかない!って感じで書きました!

のりちゃん、こんなんで良ければもらってやって下さい!!!!!