「小犬・・・?!」
迷子の迷子の、子犬君?
2人は久し振りの休暇、と言う事で2人で遠出する事にした。
やってきたのは紅南国と西廊国との国境のすぐ近くにある丘
この時期は綺麗な花が沢山咲き誇っている事で有名なのだ。
2人は朝早くに宮殿を出て井宿の術でここまで来た。
最初は2人で色々な花を見たりと歩き回っていた。
しばらくして、2人は木陰で休む事にした。
2人は腰掛けるとただ静かに自然を感じていた。
最近立て続けに倶東国側との戦いがあり、休みと言う休みがなかったのだ。
ただ座っているだけでも体が休まる。
2人はいつのまにか深い眠りの世界に入り込んでいた。
いつのまにか日は2人の天辺に来ていた。
そんな時だった。
2人が同じ声を聞いて同時に目が覚めたのだ。
「あん、あん」
「だ〜?」
「ん〜、うっさいな〜、一体なんや・・・?」
「・・・あん」
「・・・子犬?!」
「・・・なのだ・・・」
2人の目の前には子犬が1匹いた。
まだ生まれて2・3ヶ月といったところであろうか
黄土色に短毛、尖っていて先は天に向いている耳、黒い鼻、
くりくりとした黒い眼
どこもかしこも愛らしい
「可愛いのだ〜。どこからきたのだ?」
井宿は早速子犬を撫でた。
一瞬怯えていたが、すぐに慣れたようだ。
ちょこんと井宿の膝の上に乗ってきた。
「お前、どこから来たのだ?ご主人様はいるのだ?」
「あん、あん」
子犬はただ無邪気に鳴くだけ。
「しょうがないのだ。ひとまず今の所はオイラたちがこの子の面倒を
見てるのだ。」
「俺らが!?」
翼宿は正直ちょっと嫌であった。
まず、元々顔が怖いと言われる翼宿である
動物が怖がるのである。
そして、もう1つは井宿の事。
せっかくの久し振りの休暇
できれば2人で過ごしたかった。
それなのに・・・・・
「翼宿・・・嫌なのだ?」
「俺は・・・その・・・・・」
翼宿は本心を言えなかった。
そんな理由で子犬を見過ごすような人だと、井宿には思われたくなかった。
「ええい、面倒見てやろうやないか!!」
そういうと翼宿は犬を抱き上げた。
「翼宿、あんなに楽しそうにして・・・」
最初は犬といるのを嫌がっていた翼宿であったが、いまではすっかり
子犬と遊んでいる。
今は鬼ごっこのような事をしている。
「翼宿、本当に可愛いのだ〜」
井宿はと言うと、完璧に惚気ていた。
「犬ころっ、ちょっと待てやっ!!」
「あんあんっ」
子犬は巧みに翼宿から逃げ回っていた。
「捕まえたでっ!
あっ、こらっ舐めんなっ、くすぐったいやないか〜」
翼宿が子犬を抱き上げてやると、翼宿の顔をペロペロと舐めた。
「こら、やめって
そろそろやすもやないか、俺もうくたくたや・・・」
「あんっ」
「あ〜ほんま疲れたで〜」
「お疲れなのだ、翼宿」
「まったく〜子犬のくせに足が速うてほんま疲れたで〜」
翼宿は井宿の隣に座り込んだ。
子犬は翼宿のもとを離れてまだ遊んでいた。
自分の尻尾を追っかけてくるくる回っている。
「可愛いのだ〜」
「ああ、そやな」
「にしても、この子の飼い主はどうしたのだ・・・」
「せやな・・・」
かれこれもう12時間位はここでこうしていたが、飼い主らしき人は
来なかった。
「どうしようなのだ・・・」
「宮殿に連れてくのはどうや?」
「でも、もし飼い主がいたらその人が可哀想なのだ・・・」
「せやかて、それはこいつの事見てなかったからやないか!
しゃーないやろ・・・」
子犬だけがまだ無邪気に遊んでいた。
結局あのあと1時間ほど待ったが、飼い主は訪れなかった。
「やっぱり、オイラたちが連れて帰るしかないのだ・・・」
「せやな」
翼宿が子犬を抱き上げた。
「お前、俺たちと来るか?」
「あんっ」
何事もないかのように無邪気な顔で1声鳴いた。
「何にもわかっとらんって顔しおって・・・」
「しょうがないのだ。
さぁ、じゃあ帰るのだ」
「せやな・・・」
翼宿と井宿は帰る支度をし始めた。
その時・・・
「鈴〜、鈴〜!!」
「あんっ!!」
「ん?どうしたんや?おい待てって!!」
子犬は翼宿の腕の中から飛び降りると駆け出した。
「鈴〜。・・・鈴?!」
「あんっ、あん!!」
『鈴』と叫んでいた少女は、子犬の方へと駆け寄って抱き上げた。
その子犬も幸せそうに尻尾を振っていた。
「あの子は・・・」
「飼い主、やろか・・・?」
「鈴!鈴!
会えて良かった〜ホント良かった!心配したんだよ〜、鈴」
「あんっ!」
その少女はやっと2人の存在に気付いた。
「お兄ちゃんたちが、鈴の面倒見てくれてたの?」
「この子、鈴って言うのだ?可愛いのだ」
「ありがと」
「あん!」
そう少女は言った。
「さっ帰ろ、鈴」
「あんっ」
少女と子犬、鈴は2人に背中を向けると去っていった。
「行っちゃったのだ・・・」
「あぁ・・・」
「翼宿、本当は寂しいのだ?」
「なっ、なんでや?!」
「だって、あんなに仲良く遊んでいたのだ。兄弟みたいだったのだ。」
そう言うと井宿はくすっと笑った。
「兄弟って、ったく・・・」
「最初は子犬に焼きもち妬いてたのに、可愛いのだ〜」
「んなっ!!・・・気付いとったんか・・・・・」
「翼宿の事は全部知ってるのだw」
翼宿は毎度の事ながら顔は真っ赤になっていた。
そんな翼宿の頭を井宿は子犬のように撫でてやった。
「でも、犬って良いもんなんやな。俺も飼ってみたなったわ〜」
「オイラはもう充分なのだ〜」
「えっ?井宿は犬飼ったことあるんか?」
「今、飼ってるのだっ」
「え〜どんなんや?」
「そうなのだ〜」
井宿は翼宿を見つめると話し始めた。
「えっと、ちょっと素直じゃなくて言うこと聞いてくれない時もあるのだ。
でも、根は素直で、可愛くて優しくて・・・。夜のお相手もバッチシ
なのだ〜。
そうなのだ、犬というよりは狼、と言う方が正しい気もするのだw」
「えっ、ちょっちょう待てやっ!それって、もしや・・・・・」
井宿が翼宿に笑いかけた。
「今日は察しが良いのだ〜翼宿v」
「じゃやっぱり、俺の事なのか?!」
「当たりなのだっw」
「なっなんやて〜!?俺はお前になんて飼われてないで〜!!!」
「そうなのだ?じゃあ翼宿はオイラがいなくなっても大丈夫なのだ?」
「えっ、それは・・・・・
井宿、お前ずるいで〜!!」
「あははなのだ〜」
井宿が原っぱへ駆け出した。
「こら〜ちょう待てや!!!」
「オイラを捕まえてみるのだっ」
「言うたな〜絶対捕まえたるで〜!!!」
2人の長い追いかけっこは始まった。
夕日が輝いている。
2人に微笑みかけるように・・・
☆管理人からのコメント☆
あ〜、朱姫様、本当にお待たせいたしました!!
しかも、小説の更新さえもずっとしてなかった気がします(−−;)
こんなにサボったのはサイト開設以来始めてかも・・・
本当にすみません・・・・・
今回はほのぼのしたのにしようと思って書いてたのですが、やっぱりほのぼのにはなりきらなかった気がします(>_<)
はぁ・・・
修行してきます(−−;)
あ〜ちなみに、子犬を出したのは100%私の趣味です(^^;)
子犬のキーホルダーを見ててたまたま思いついたのです・・・
朱姫様、こんなんで良かったら貰ってやって下さい(^^;)