初めて会った時
ドクッ!!!
『なっ、なんなのだ・・・この気持ち・・・。』
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星宿が美朱のたびに同行する為に、井宿が星宿に成り代わってかなりの
月日が経った。
さすがに皇帝の周りにいる人々は異変を感じつつあった。
「陛下は一体どうなさったのだろうか・・・。」
「最近いつも見ている鏡も見ていらっしゃらないし・・・。」
「たまに椅子に足を投げ出して寝そべったりもなさっている。」
「それよりも、まず言葉遣いが変わられた。陛下は語尾に「のだ」など
おつけになって話されなかった。」
「それに、政務もまったくやって下さらない・・・。一体どうしたものか・・・。」
みんな不思議でしょうがない。
実は目の前の陛下が本当は井宿であるとは知らないのであるから仕方ない。
「は〜、みんな早く帰ってきて欲しいのだ!」
最近の星宿(本当は井宿)から聞ける言葉と言ったらこればかりである。
その時、
「陛下!」
そう言いながら側近のものが駆けてくる。
「なんだ。」
「ただいま朱雀の巫女様が朱雀七星をしたがえてお戻りを・・・。」
側近が言い終わらないうちに偽星宿(笑)は凄い速さで駆け出していた。
「・・・、やっぱり最近の陛下はどうもおかしい・・・。う〜ん・・・。」
側近は首を傾げるばかりである。
「お帰りなのだ〜っ!」
井宿は術を解きながらこう言った。
「井宿!!」
「なんやあれ!?動物か!?」
井宿は珍しく少しムッとした。
そう言った奴のほうを見る。
その時・・・、
ドクッ!!!
急に胸が高鳴った。
『なっ、なんなのだ・・・この気持ち・・・。』
井宿には何がなんだかわからない。
ただ、この人を見ただけである。
井宿が考え込んでいる間に星宿は早着替えをして再びみんなの前に出てきた。
『あっ、いけないのだっ。』
「陛下!ご無事で何よりですのだ!!」
「井宿こそ・・・身代わりご苦労だったな。」
この旅で仲間になったものは驚いていた。
そして、さっき井宿が見て胸が高鳴った人が大声でこう言った。
「こ・・・、皇帝陛下ぁ!?!?!?」
その後みんなは忙しかった。
星宿が皇帝陛下だと知ったみんなはカチカチに固まっている。
そんなみんなをなんとか部屋に集めてこれからの事について話し合う。
井宿は話を聞きながらもさっきの人が気になって仕方がない。
さっきの自己紹介で彼が「翼宿」である事が分かった。
でも、井宿にはいまだにさっきの気持ちが何だったのかはわかって
いなかった。
井宿がまた翼宿を見ながらそんな事を考えている間に話はどんどん
進んでいる。
今、星宿が鬼宿と朱雀の四神天地書をどうするか、と考えていた。
その時美朱が、自分が行く、と言い放った。
星宿は心配そうである。
井宿はハッと我に返った。
「オイラがついていくのだ!ただし今から鬼宿君とじっくり段取りを
相談した方がいいのだ!」
そういうことで鬼宿の部屋と自分の部屋を気でつなぎ、美朱と会いに
行く段取りを決めさせる事にした。
美朱は久し振りに鬼宿に会えると聞いて嬉しそうである。
早速気をつなぐ・・・。
「・・・、わかった!じゃ明日の夜0時にそこで待ってて!
・・・会えるんだね今度は・・・ホントに・・・」
「・・・美朱・・・」
気をつなぎ明日の打ち合わせを終わらせた後、2人は熱い口付けを
交わしていた。
屏風を挿んでの本当のものではない・・・。
そんな光景を見て井宿は自分の事を考えていた。
自分の翼宿に対する気持ちは、この2人のものと同じではないかと・・・。
・・・、でも、まだはっきりわからない・・・。
やることも終わったし、井宿は試しに翼宿の部屋へ行ってみる事にした。
「コンコン」
「ん?誰や?」
「井宿なのだ。ちょっと入っても良いのだ?」
「おっおう、ええで。」
ガチャッ・・・
井宿が入ってくる。
翼宿の目の前に立つ。
「どうしたんや、一体?」
「いや、ちょっと翼宿と話がしてみたっかっただけなのだ。」
「さよか・・・。」
沈黙が流れた。
「「あの・・・」」
2人は同時に口を開いた。
思わず笑ってしまう。
「ごめんなのだ〜。」
「いやいや俺こそっ」
2人はしばらく笑い続けた。
やっと笑いが治まった。
「で、なんなのだ?」
「あ、あぁ・・・、その・・・。」
「ん?」
「さっきは、動物か、なんか言って、わっ悪かったな・・・。」
ドクッ・・・
『またなのだ。一体なんなのだ?』
井宿は再び動悸を感じていた。
でも、まだわからない。
「・・・、井宿、やっぱ気にしてたんか?」
井宿はハッと我に返る。
「そっ、そんな事ないのだ。そんな事気にしてくれてたのだ?」
「そんな事やない!俺、いっつも考えずに酷い事言ってまうんや。
俺、悪い奴やな・・・ははっ。」
翼宿は自嘲気味に笑った。
井宿はなんとなく自分も悲しくなった。
「翼宿、そんなに気にする事ないのだ。それに、言ってしまったとしても、
翼宿はちゃんとそれを考えて、オイラに謝ってくれたのだ。それは
とっても良い事なのだ。翼宿は本当に良い奴なのだ。」
「・・・・・、井宿こそええ奴なんやな。俺なんかの名前ももう覚えてる
もんな。」
ドクッ・・・
『またなのだっ。これは、やはり・・・』
井宿は、なんとなくだが解ってきた気がした。
照れながらもこう答える。
「そんな事ないのだっ。オイラなんか・・・。翼宿の方が良い奴なのだ。」
「そんな事あらへん!井宿の方が!」
「いや、翼宿の方が!」
「井宿!」
「翼宿!」
「「ぷぷっ・・・」」
同じやり取りに2人は思わず笑ってしまった。
そして井宿は思った。
『翼宿の笑顔を見ていたいのだ。
1番近くにいて翼宿のこんな笑顔を見ていたいのだ。
オイラは翼宿が好きなのだ』
と・・・・・
「オイラたち良い友達になれるのだ。」
「そやな・・・、これからよろしくな、井宿。」
翼宿はとびっきりの笑顔でそう言う。
「こちらこそ、色々とよろしくなのだ、翼宿。」
井宿もとびっきりの笑顔で返す。
『こんな人なら愛せるかもしれないのだ。そして、こんなオイラを
愛してくれるかもしれないのだ。
翼宿、これから本当によろしくなのだ・・・。』
☆管理人からのコメント☆
600HITを踏んで下さったみなと様へ、この小説を捧げます!
いやぁ、今回のはなぜかとても書きやすかったようで、ネタが見つかったらすぐに書き上げる事が出来ました。
「ほのぼの系」と言う事でしたので、パッと思いついたので2人が初めて会った時の事を書いてみました。
でも、渡瀬先生の原作に話を沿わしてしてしまいました・・・。大丈夫かな・・・?
にしても、まだまだ井宿が純粋ですねぇ・・・。自分で書いていて驚きました(^^;)
これも新鮮だけど、やっぱ井宿は翼宿を押さなければ!攻めなければ!
でも、井宿が最後の方に「色々」と言っていたのはどんな意味が込められているんでしょう?
そういえば、読み返したのは良いけど、リクエストでは「井×翼」とあったのですが、その場面がえらい少ない!
ごめんなさいね・・・。
それでは、長くなりましたが、みなと様、改めておめでとうございます!