天の川の元で
「ちょっと散歩してくるっ」
そう言って多喜子はみんなのいる場所を後にした。
何かあるわけでなく、なんとなく1人になりたかったのだ。
もう夜遅いから危ない、と言われたが気にせず出てきた。
あたりは木々に囲まれ、一段と深い闇に支配されている。
多喜子はしばらく歩いた。
すると、いきなり広い所へ出た。
うっすらと雪が残っているようで、ぼうっと地面が光っているように
見える。
周りに何もなくなったからか、多喜子は肌寒さを感じた。
しかし、そのまま元の道を戻ろうとはせず、多喜子はまっすぐ歩き出した。
しばらく歩いたが、寒さは増す一方である。
もう動けそうにもない
しかし、その時ふと暖かい風が吹いてきた。
何故、と思い周りを見回すと・・・
「り、リムド?!」
「こんな時間に、そんな格好で歩いてたら寒いに決まってるだろ?」
そう言うと、どんどんと暖かい風を起こしていく。
寒さが一時和らぐ。
しかし、女宿の力では寒さを凌ぎ切る事はさすがに出来ない。
それを悟ると、女宿は自分の上着を脱ぐと、多喜子の肩にそっと
かけてやった。
「えっ、でっでもリムドが寒いんじゃ・・・」
「俺はそんなんなくても大丈夫だ・・・へっくしっ」
「ほらっ、ちょっと待ってね」
そう言うと、多喜子は女宿に近寄り、上着を軽く持ち上げたかと思うと
女宿の肩にも掛けてやる。
「なっ、なにしてっ・・・」
「こうしたら暖かいでしょ?ほら、動かないでよ〜」
「っ・・・ったく・・・・・」
「ねぇ、あそこの木の下に座らない?」
そう言うとそそくさと移動し始める。
上着を一緒に掛けているのだから、女宿も一緒に移動せざるを得ない。
2人は腰を下ろした。
「リムド暖か〜い」
そう言うと、多喜子は女宿に寄り添った。
「なっなにやってるんだっ!」
女宿の顔は真っ赤になっている。
そのまま、しばらく沈黙が続いた。
女宿から口を開いた。
「お前、なんで1人になろうとしたんだ?」
「えっ?う〜ん・・・なんとなく」
多喜子は女宿へ笑いかけるように言った。
女宿の顔が少し険しくなる。
「本当はお前の国の事を考えているんだろ?」
「えっ?!」
多喜子はしばらく考えてみた。
確かに、1人になった時、考える事といえば、自分のいた世界の事で
あった気がする。
でも、そのために1人になろうと思った事はなかった。
「そっ、そんな事ないって〜」
「いや、お前は無意識に国の事を、元の世界の事を考えたくなって、
1人になってたんだ。やっぱ帰りたいんだろ?」
「違うって〜」
多喜子は内心揺れていた。
もしかしたら、そうだったのかもしれない。
今も元の世界の事は忘れられないのだから・・・
「・・・多喜子・・・?」
女宿が顔を覗きこむと、目から大粒の涙がこぼれていた。
「悪い、俺言い過ぎた。」
「うんん、違うの・・・リムドの言うとおりなのかなって思って・・・。
だって、お父様は私の事必要ないんだ、って思うのに、どうしても
忘れられないの・・・」
女宿の心中も複雑であった。
『俺は、こんな事を言いたくなかったんだ・・・』
女宿は多喜子とずっと一緒にいたかったのだ。
だが、多喜子を目の前にすると口につく言葉はいつも違ってしまうの
だった。
今回も、この状態では言えるはずもない。
「大丈夫だ、俺が絶対お前を元の世界へ返してやる。」
そう言うと、女宿は多喜子と肩へと腕を回し、自分の方へと引き寄せた。
内心では、一生離さない、と誓いながら・・・
多喜子は予期せぬ事に対応もできず、そのまま女宿の体にぶつかる。
しかし、その体は思っていたより暖かくて、多喜子はそのまま体を
預けていた。
「ありがとう・・・」
多喜子に笑みが戻る。
女宿は片手を多喜子の顔にあててやると、涙を拭ってやった。
「寒いから涙が凍るぞ」
「うん、ありがとう」
多喜子がふと空を見上げた。
「わぁ〜星がきれ〜い!」
「この辺りは空気も綺麗だからな」
「私も、こんな満天の星初めて〜」
「・・・・・」
「リムド・・・?」
「俺、まじまじと星を眺めたのなんて初めてだ・・・。星ってこんなに
あるんだな」
一生懸命食い入るように見ている女宿の姿はとても微笑ましかった。
「あっ!天の川まで見えてる〜!」
「天の川?」
「うん、ほらっ、私たちの頭の上に」
そう言って指差して示した。
「あの、空がぼうっと光ってるの全部が星なんだよ。」
「すごいな、星って・・・」
ふと何故か、多喜子は女宿の気を惹きたくなった。
もしかしたら、焼きもちなのかもしれない。
ごろん、と女宿の肩に頭を乗せた。
「どうしたっ、どこか悪いのか?!」
「うんん、なんにも・・・」
「ったく、脅かすなよな」
憎まれ口を利いてはいるが、内心は全然怒っていないのを多喜子は
知っている。
女宿は多喜子の頭に自分のを寄りかからせた。
決して、多喜子の負担にならないように、それでいて、多喜子の体温を
感じられるように・・・・・
2人はしばらく、そのまま星を眺めていた
2人きりで・・・・・・・・・・?
〜おまけ〜
実は、2人を物陰から見ていたものがいたのだ。
「くそっ、多喜子のやつ、リムドにくっつきやがって!」
「リムド様、私という者がありながら、私はあなたとずっと一緒に
いたではないですかっ!」
「「・・・・・」」
2人は顔を見合わせる。
片方がニヤリと笑った。
「ようは、あの2人を引き離せば良いんだよな?」
「そのようですね」
「目的は同じだから、もうこれは仲間だよな?」
「はい。お互い頑張りましょうね。
そして、2人を引き離したら・・・」
「ソルエンさんはリムドを・・・」
「虚宿は巫女を・・・」
お互い、真顔に戻る。
「じゃあ作戦を立てましょう」
「おぅ!」
今、2人に新たな敵(?)が迫っている・・・
2人はこのままでいられるのか?!
☆管理人からのコメント☆
はい、お待たせしました!!
やっとのことで完成です!!
とはいっても、なんか場面展開がめっちゃ速いですね〜特に前半・・・
なんであんなんになってしまったのでしょう・・・?
しかも、私のイメージしてた女宿と違〜う!!
もっと、自分の気持ちを表現できないシャイな女宿が私の理想だったのに、随分と言ってますよね・・・
はぁ・・・(−−;)
口調も変な気がする〜
もう駄目だ・・・
で、タイトルについてですが、今回のは私の旅行での思い出が元となっているのです。
私は天の川にとっても感動したので・・・
本当は、蛍と天の川をセットにして「空の星、地上の星」とロマンチックにしたかったのですが、1年中
冬みたいな北甲国に蛍はな〜と思って、蛍はカットしたのです
あ〜、長くなってしまいましたが、のりちゃん!!
改めておめでと〜!!
以上っ