明けぬ夜の旋律



まだ日も明けぬ頃、亢宿はふと目が覚めてしまった。


「ん、まだこんな時間なのか・・・。たまには良いかな。」

亢宿は起き上がった。
静かに服を着替える。

角宿の方を窺うが、ぐっすり眠っているようだ。

亢宿は笛を持つと外へ出た。
もうそろそろ日が地平線からのぞきそうである。

家の前にある木の下に腰を下ろすと笛を構える。


ピュ〜ピュルルル〜♪

笛の音が、まだ夜の開けぬ村に響く。
まるで、音が染み入っていくようだ。

とても清々しい。

寝ている人々を起こそうするようなものではない。
むしろ、すべての人に安らかな眠りを与えるように・・・


10分位は吹いていただろうか

それでも、夜はまだ開けそうもない
さすがにまだ底冷えする。

亢宿が、そろそろ家に入ろうとして笛の音を止めた時

「兄キ・・・・・」
「角宿?」

振り返ると、入り口に角宿が立っていた。

「まだ夜明け前だよ。寝てたんじゃなかったのか?」
「ん〜寒くて起きちゃった・・・」
「僕が起きちゃったから、なのか?」

そう。
2人は同じベッドで寄り添うように寝ていたのだ。
寝ている間にその温もりがなくなれば、寒くなっても仕方がないだろう。

「そんな事な・・・ふぁ〜あ」
「まだ寝ていたら?」
「うんん。それより、もっと兄キの笛聞きたいな。」

無邪気な顔でそう言われてしまっては、断れない。

「可愛い角宿に頼まれたら、断れないな」
「兄キっ///」
「あははっ」

亢宿の言った言葉は、もちろん本心なのだが、あえて深くは言わなかった。

角宿は亢宿の横にそっと座る。

「寒くないか?」
「少し・・・」
「寝起きなんだから気をつけるんだよ。
僕にくっついているんだよ」
「わかったよ」

角宿は亢宿の肩に寄りかかる。
亢宿の体温感じる。

亢宿は再び笛を構える。


ピュルルル〜ルル〜♪

先程とは少し違う調べ



「ん・・・なんか、眠くなってき・・・」

少し催眠効果があるようだ

亢宿は笛を止める。

「さぁ、家に入ろう。ねっ?」
「ん〜、眠いからここで寝るよ・・・」
「こんな所で寝たら風邪ひくよ、ほらっ」
「や〜だ〜」

すでに角宿は夢の中に入りつつある。

「まったく・・・」

そう言いつつも、亢宿の顔は怒っていないのであった。



角宿の頭の中では先程亢宿が弾いていた旋律が流れていた。
それが心地よくて、今にも意識が飛びそうだ。

そんな時、急に体が宙に浮いた気がした。
眠いものの、持てる今の意識を総動員して瞼を持ち上げると・・・

本当に浮いていた
いや、正確には浮かされていた

亢宿が角宿を抱いていたのだ。
それも、お姫様抱っこで(笑)

とても恥ずかしかったのだが、
それ以上に眠さと、亢宿の温もりを感じて気持ちがよかった。

「兄キ・・・?」
「ん、なんだい?」
「ありがと」


亢宿は角宿の顔をまじまじと眺めた。

『角宿の、こんな顔を見ていたい。いつまでも・・・』

そう思わずにはいられなかった



家に入ると、寝付こうとする弟を起こさないようそっと部屋の寝台へ運ぶ。
そっと下ろすと、角宿は静かに寝息を立てていた。


「さて、角宿が起きた時のために、朝食の支度をしとくか」

つぶやくように言うと、亢宿は寝台を離れた。
しかし・・・


「あに、き・・・」
「起きてたのか?」
「だって、寒いんだもん・・・。兄キがいないと、あったかくても、
寒いんだ・・・」
「しょうがないなぁ。
僕がついててあげるから、おやすみ」

亢宿は寝台に寄ると端に座り角宿の手を握ってやる。
すると、角宿は重たい瞼をあげ亢宿を見た。

「兄キ?」
「ん、なんだい?」
「俺の事、抱いて・・・」
「へっ?」


亢宿はかなり動揺した。
それを悟ったのか、角宿が顔を真っ赤にして首を振る。

「違うよっ!ただ、抱き締めててほしいんだ」
「なっなんだそうか、あはは・・・」

明らかに動揺している。
その状態に角宿は笑みを浮かべる。

「ねっ、お願い」

こんな可愛い角宿に、亢宿が断れる訳がない。

「しょうがないなぁ〜」
などと言いつつ、内心はちっとも嫌がってなどいない。

寝台に乗ると、そっと角宿の横に寝る。
そして自分の胸に抱き寄せる。
力強く、それでいて、優しく・・・

角宿は目を瞑りながらも、満面の笑み
極め付けに

「ありがと、兄キ・・・」

などと、今まで以上に嬉しそうに答える。


とっさの事に、つい亢宿は無意識に体が動いていた。

「んっ・・・」

優しく口づける

角宿の顔は驚きの色しか伺えない

しばらくすると、亢宿から唇を放す。

「何してるんだよっ、兄キ?!」
「おやすみの口づけw」
「っ・・・」

角宿の顔はもう真っ赤
亢宿には、それもまた可愛いと思えるのだが、今はあえて言うのは
やめておいた。

「さぁ、おやすみ・・・」

返事の代わりに気持ちが良いほどの寝息が聞こえてきた。

亢宿は、そんな角宿の寝顔をいつまでも見つめていた。


「おやすみ・・・」





おやすみ

僕のこの胸で・・・・・











  ☆管理人からのコメント☆

やっとUPできました(>_<)
夏海様!
ほんっとうに長い間お待たせしてしまいまして、すみませんでした!

いやぁ、テスト中なのに、学校の行き帰り&暇な授業(爆)とはいえ、書いてしまいましたよ(^^;)
今回もまた初ネタでした〜
あの亢宿が攻め〜!?という状態でしたが、なんとかなりました(^^;)
角宿受けはまだわかるのですが・・・
でも楽しく書かせて頂きましたw

にしても、最後のフレーズですが・・・
お分かりでしょうか?
亢宿のキャラソング「夜想曲(ノクターン)」の最後のフレーズなんです!!
どうしても最後の部分が思いつかなくて、考えていた時に聞いていたのがこの曲だったんです!
もうピーっんときました!!
書けてよかった!!

改めまして、おめでとうございます☆