ただ…私の傍に。




朱雀召喚を控えている。



今、私は幼き頃よりずっと思っていた女性に、はっきりと背を向けられた。





ずっと、ずっと...

ただ一人、会ったことも無い頃から、ずっと憧れ、想い描き、好いていた…













夜――――

私の悲しみを一層覆いかぶさり深い闇へと引きずり込むようだ。







「美...朱、ずっと、お前を好いていた...。」







紅南国宮殿。第四代皇帝、彩賁帝こと星宿の寝室。
星宿は椅子に座り、ただ悲しみにふけっていた。

何もかもすべてが失ったような、悲しい顔をしてうつむく。

本来の美しい顔に一筋、また一筋とその量を増し、流れゆく涙。







「愛している…。」







つぶやく一言にさらに闇へともぐりゆくよう――――。














…コン、コン……。






「!!!!!!!!」


星宿は、この音に過敏に反応し、ふと我に戻る。








「私...柳宿です。」
「柳宿か、どうしたのだ?このような夜更けに。」
「どうしても、星宿様にお会いしたく...すみません。」
「かまわぬ。 ……開いている。」



と、柳宿を自ら自分の寝室へと招いた。
扉を背にしたまま、涙をそそくさと拭う。




「失礼します...。」 ―――ギィ〜バタン。



星宿は椅子から立ち上がり、





「用とはなんだ? 柳宿。」



柳宿に問いかける。少し沈黙後、柳宿は




「本当は聞くつもりはなかったのですが…。」





と、言葉をとめ、つばを飲み込み、重く再び口を開く柳宿。








「実は昼間の美朱と星宿様のお話を…。」




「そうか。聞いていたのか。」

「ハイ、申し訳ございません...。」
「よいのだ、柳宿。」



柳宿は、今まで星宿が泣いていたのを、目を見て悟った。








星宿は窓に歩み寄り、窓淵に手をあて、夜空を見るように語る。











「柳宿…… 私は情けない。
 ずっと好いていた女性に、自分ではないと背を向けられると、
 こんなにも悲しいとは...。
 私は、美朱をこんなにも愛してしまった、情けない男だ...。

 このような男が一国の帝として国を守れるのだろうか。
 これから朱雀召喚というのに、私は....。

 でも、私は、美朱のことを思うと情けない男にもなれるのかもしれぬ。」


我慢していた涙がこぼれ、窓の淵にポタポタと落ちる。









「星宿様……。」



柳宿は、言葉が無くなった、むしろ、かけられなかった。
こんな姿の星宿を見るのが初めてだったから...








(私はあなたを、お慕いしているのに...!!!)







柳宿もまた、ずっと前から星宿を慕っていたのだ。

自分以外むしろ、女性...美朱を好いていた、
どれだけ、美朱に焼いていたか、女になりたいと思ったことか。






自分には星宿を慰められないのか....




自分は求められていない。


分かっていたが、それだけあって、柳宿も胸が痛む。










「分からない、でも星宿様をお救いしたい!!」









その気持ちから、柳宿は星宿をそっと抱きしめた。













「星宿様...。今は私を、美朱だと思って抱きしめてください...。」



柳宿は、それでいいと思った。星宿の為なら――――。








星宿は柳宿を目の前にし...小声で






「すまぬ、柳宿...少しだけ―――。」
「ハイ。」


星宿は今までの美朱に対する気持ちを現わにするように、
柳宿を思いっきり抱きしめた。





心の中で何度も







(美朱愛してる!! 美朱!!  美朱!!  美朱!!  美朱――――!!)




と、繰り返しながら...



















ゆっくりと、二人は離れた。









「…ありがとう。ぬり……ッッ!?」

星宿はふと柳宿の顔を見ると、柳宿は涙を流していた。



「あっ..!! 星宿様っ。気になさらないでください。」


と、柳宿は涙を拭い、星宿に背を向けた。
















星宿は、柳宿の泣き顔を見ないように後ろからそっと包み込む。





「すまぬ、柳宿。私はそなたの気持ちに気づいておきながら、
 甘え過ぎてしまっていたようだ...。」





「星宿様...。」



柳宿は、涙を流しながら、向きを変え星宿の胸へと飛び込み、







「星宿様ッッ。あなた様のお気持ちは分かっています!!
 でも、でも…… ずっと前から...お慕いしておりました!!!」





















星宿は、何も言わず、柳宿を抱きしめる――――――
















その沈黙は柳宿にとってどれほどかは分からなかった。


















泣き崩れ、足に力が抜けた柳宿を
星宿は優しく抱きかかえ、寝室にある椅子へと座らせてあげた。









自分は膝を床につけ、柳宿の右手を取り、甲に軽くキスをすると、




見上げるように真剣な眼差しで、




星宿は、言った――――。


「今夜は、私の傍にいてくれぬか。」







その美しい瞳に真剣な上目遣いの眼差しに、柳宿の返事は即決だった。



















「はい....。」











  ☆管理人からのコメント☆

緋桃ちゃんのサイト1000HIT突破記念にサイトでフリー配布していたものを掻っ攫ってきました〜(爆)
とっても素敵です〜v
私、そこまでこのCPにはまっているわけではないんですが、
でも、この話はとっても素敵でした☆
お話も素敵ですが、特に好きなのはイラスト〜!!
キスされただけでもうひゃって感じなのに、その後あんな瞳で見つめられたら・・・・・
私は即堕ちるかも(爆)
ごめんなさい、浮気発言(>_<)
でも、星宿様の視線、ドキッてきません?
うひゃ〜私の大好きなキャラさ〜ん!!すみません(*_*)

緋桃ちゃん、1000HITおめでとう!
これからも頑張ってね〜!!!
小説&イラありがと☆