昔。はるか昔の話。
時の流れに身をまかせ、今、自分はここにいる。

でも覚えているだろうか?

少なくとも彼らは覚えていない―――

忘れ去られてしまった一日。
今、振り返る。


忘れ去られた、一日の記憶




時は、彼らが朱雀七星士として活躍する約11年前。
ここに同じ年の2人の男の子がいた。



一人。

幼いながらも家の為に畑仕事をし、家族を支える男の子。
額に鬼の字を持つことで、周りの子供たちによくいじめられている。



もう一人。

存在感が無い父親で、女系家族内に育つ、男の子。
一番年下なのに、姉達によく“コキ”に使われ、毎日に嫌気をさしている。








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「今日も行ってくるね!!」
「気をつけて行って来るんだよ、鬼宿。」
「わかってるって。母さんはゆっくり寝て安静にしてね。」

というと、幼い6歳になる鬼宿は町へと畑で取れた作物を売りに出かける。








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「コラァァアア!!!! 俊宇〜〜~!!!」
と、女とは思えない口調で怒鳴り声が聞こえる。


「うっさいわ、このぉ………」
「『このぉ…』なんやの?え??」
「いや…何でもあらへんわぃ!」


「居眠りしとらんで、さっさと薪割りしぃや!!それが終わったら、風呂の湯、焚きや!」


女はその場から立ち去った。




「((なんや…おのれらは何もしよらんと、俺ばっかやんけ!!こんな家…嫌いや!!))」




そう、のちに女嫌いで、山賊になる翼宿6歳。




「俺は、何でこんなに…絶対こんな家、出たる!!いつか…出たる!!」


ぶつぶつと小声でいいながら、黙々と薪を割る。



ハッっと思いついたように…
「そやっっ!!そうなんや!!こんな家…出たらええんや!!」
薪を割っていた斧を捨て、身支度を始めた。



「俺は今から家出したる。こんな家嫌いや。」



荷物を持ちそそくさと家を出る。
当ても無く、幼い一人旅。








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「今日もあまり売れなかったなぁ…。」


まだ日が暮れる前でいつもより帰りが少し早いがとぼとぼと自分の村へと帰る鬼宿。


町から自分の村へと帰る山越えの途中でいつものいじめっこ5人が現れた―――。




「な〜に、悲しそうな顔して…あぁ!まぁた売れなかったんだろ〜!!」
「お前が売っている限り売れないよ〜だ!!」
「“おばけちゃん”だもんなぁ〜。」
「なっ!!おばけちゃ〜〜ん!!」


「おばけ〜〜、気持ちわりぃんだよ〜!!」



と、泥を投たり、鬼宿を囲み四方八方から嫌味を言い、鬼宿は涙目になっている。





そんな時―――



「おのれら、なにしとんじゃ〜!!」

鬼宿にとっては聞き覚えの無い声。迫力のある関西弁。


「よってかかって1人を5人でかかるたぁ、おのれら男らしゅうないで!!」



俊宇は鬼宿を背にし、いじめっこと向き合う。




「お前、なんだよ、正義の味方だと思ってんだろ!こんなやつやっちまえ〜!!」


いじめっこは5人がかりで翼宿にかかる。









3分後――――





いじめっこは、泣きながら自分の村へと帰っていく。
俊宇は少しボロボロになっていた。


「だ、大丈夫?君??僕のセイで…巻き込んじゃって…。」


鬼宿は自分を助けてくれた俊宇に駆け寄り砂ぼこりがついた服をはたいてあげた。



「ええゎ、気にせんとき!勝手に俺が入ったんやから。
 俺はあんなやつら、嫌いやねん。服は大丈夫やて、替えがあるさかい。」

「えっ?」

「ほれ!」



翼宿は家出したとき持ってきた荷物から服を取り出した。



「…名前なんてゆうんや?」
「ぼ...僕?僕は鬼宿。j鬼宿だよ!」
「俺は侯俊宇って言うねん。よろしゅ〜な、鬼宿!!」
「よろしく、俊宇!!」


二人はがっちり手を握り合った。



自分はいつもいじめっこにやられてばかりなのに、
この俊宇はたくましいのだろうと鬼宿は思っていた。


「鬼宿、これやるから着ろや!!」



俊宇はボロボロで泥がたくさんつけられた鬼宿の服を気にし、
自分の荷物から服を出し、鬼宿に渡した。

「あ...ありがと。」



二人は新しい服に着替える。




「鬼宿、お前、いつくなん?」
「6つ…。」
「ほんまかぁ!!俺と同じやんけ〜〜。」



和気藹々。気が合ったのか、今日初めて会ったかじゃないような仲のよさ。
時間なんてすっかり忘れるほどに遊んだり話したりした。





「せやけど、鬼宿は何で、あんないじめっこにいつもやられてん?」
「別に…気持ち悪いからかな。」
「ふーん、そぉなんか〜。」




鬼宿は自分の額に字が出るから…とは言わなかった。

なぜなら、せっかく仲良くなった俊宇には…



いじめっこのように“おばけちゃん”って知られたくなかったから…


俊宇もあえて深くは聞こうとはしなかった。










「そやそや、鬼宿!知ってるか〜?ここの山の穴場!」

「え?そんなの、あるの?僕、いつもここ通り道にしか使ってないから…。」
「俺かて、この山初めて登ったんや。さっき鬼宿と会う前に走ってて見つけたんや!!」







二人は山の奥深く入っていった。














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山の頂に着いた。


すると、あたり一面に広がった夕日が沈む寸前のオレンジ色の空。




「俊宇、綺麗だね!あれが俺の村!!あんなに小さいよ!!」
「ええ時に来たみたいなぁ!夕日がめっちゃ綺麗や!!」




二人は草むらの上に仰向けに寝て語り合う。



「僕たち、友達?」
「あったりまえやんけ!」


「ねぇ、俊宇。また会えるかなぁ。」
「あぁ。会えるんとちゃう?」


「明日!!明日会おうよ、ここで。今の時間に。」
「ええで。明日な!」


「この夕日が僕たちの友情の印ね。約束っ!!」
「約束や!」






指切りをすると、
鬼宿は嬉しそうに自分の荷物を抱え家族が待つ家に駆け足で帰っていった。





「ええなぁ、帰れる家があって―――。」





翼宿も山を降りようと歩き始めた。

さっきまでは鬼宿がいて話が弾んで一人になると寂しいものである。


町に行けば、にぎやかで楽しいだろうと町に向かい足を速める。すると。




「俊〜〜〜〜〜〜宇〜〜〜〜!!!!!」





聞き覚えのある声。まさかっっ!!と振り返る俊宇。

後ろにいたのは母親だった。






「あんた、こんな荷物持ってどこほっつきあるてんのさ!探したんだよ!はよ、帰えんで!」







やっぱり、まだ6歳。
まだ親の力にはかなわないのか、
重い乳を頭の上に乗せられた後は、無理やりひっぱられながら帰る羽目になった―――。







「((いやや!!!もぉあんな家に帰りとうないんや!!))」











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翌日。










「バカ俊宇!!ガキなくせに昨日は一人前に家出なんかしてー!!」



姉・愛瞳に頭をポンポンと叩かれる。


「姉さんが『家出したんやから、昨日の分の薪割りと掃除、湯焚きせ〜』ってゆーてたで!!」

「そんなぁ…俺、用があんねんけど…。」

「あかん、と〜ぶんは外に出さんさかい、よ〜覚えとき!」





「((鬼宿との約束があるのに!!))」







姉4人。監視役が多いせいかなかなか出るに出れなかった。
日は落ちる一方。













結局、俊宇はあの場所へと行けず、約束は果たせなかった――――。














俊宇が約束の場所へと行けたのは、約1ヶ月過ぎのこと。


行ったときには、鬼宿の姿はそこには無かった。









こうして、二人で会って話し遊んだ思い出はいつしか消えてしまい、
二人の再会は約11年後・・・


七星士として自覚を互いに持ち、心宿によって操られた鬼宿と翼宿が戦う日である。











  ☆管理人からのコメント☆

緋桃ちゃんからの素敵な小説でした〜w
いやぁ、やっぱ皆さん小説上手ですよね〜羨ましい限りです(>▽<)
でもでも、緋桃ちゃんったら、この小説飾るなら隅っこにって言うんだよ〜!!!
そんなの絶対いけないって!!
こんな素敵なんだから〜w
と言うわけで、ちゃんと飾らせて頂きますvv
皆さんも素敵だって思いますよね〜!?

2人の6歳の頃・・・
幼い2人に萌え萌え〜vvv
特にやんちゃ翼宿!!
ホント、簡単に想像できちゃうよ〜vv
ホント萌え〜
(↑最近、自分はショタコンでは?!と疑う亜紀の今日この頃であります・・・(爆))



※HP用に多少加工いたしました。
 尚内容はまったく変わりありません!