高等学校の体験入学の時だった。
初めてこの高校を訪れ、
右も左も分からず迷っていた私に声をかけてくれた人がいた。

背が高くて体つきはこーなんてゆうか、しっかりしてて…
そう、ふさふさしたオレンジ色の髪の毛。
とてもたくましく素敵な人。

一目惚れ…
もう一度あの方に会いたい…

そこは先生が美形揃いとして、女子の間では大人気の高校。
受験の競争率がとても高く難関校とされている。


『紅南女子高校』





愛のチョコは誰のもの!? 前編




私は今年の春。
桜の花びらが舞う中この紅南女子高校の校門をくぐった。
入学してすぐ、先生方の紹介で…
彼は私のクラスの体育担当になった翼宿先生。

体育…
私は体育が苦手…
でも翼宿先生に会えるから好き。








そして月日は流れ、今バレンタインの時期…




美朱がと唯を呼んだ。




〜!!唯ちゃん〜っっ!!!」
「どうしたの〜?」



そもそも美朱ちゃんと唯ちゃんの二人とは入学してすぐに仲良くなった。
とても気があって、よく3人で行動している。



「もうすぐバレンタインでしょ??二人は誰かにあげる?」



美朱は目を輝かせながら、と唯に聞いた。


「うん、あげる。は? 」
「…あげよっかなって思ってる人はいるよ♪…美朱ちゃんは?」
「うん、あげるよー^^ みんなで一緒に作らない?」
「いいね、今日の放課後、3人で作ろっか。」


唯はセミロングの髪を笑顔とともに掻き揚げる。



「あっ!!! 美朱ちゃんったら、よだれ出てるよ。はい、ティッシュ!」



は、カバンからティッシュを出し美朱の口を拭く。
面倒見がいい。



「美朱ってば作るより食べるのを想像したんでしょ?」
「唯ちゃん、ひどーい!! わ〜ん…〜(;;)」



美朱と唯、二人の漫才?に笑う、
唯が突っ込み、美朱がボケで緋桃に泣きつく。
は唯と美朱の間に入り、笑い、あやすそんな役割だというのだろうか。
そんな3人だからこそとても仲がいい。




「ところで、今日の放課後に材料買いにいくの?」
「うん、早くしないと間に合わないもん。」
「それは…美朱が!!!でしょ?」
「もー唯ちゃんっっ!?」


3人には親友だ。
美朱のドジっぷりにはいつも笑える。



「今日は私…行けないや。」
「え〜何で〜?生徒会の仕事??」
は副会長だからね…」
「うぅん、違うの。体育の補習。持久走のノルマ超えてなくて…」
って1年生にして副会長の座に選ばれた天才美少女のに…体育だけ苦手なんだよね!!」
「う…;;;」



は図星で少し顔が歪む。


「そこが可愛いとおもうよー^^」
「終わってから材料買いに行こっ☆ 、待ってるからさ。」
「美朱ちゃん、唯ちゃん…ありがと!!」






☆ ★ ☆ ★






忘れる訳がない。
大好きな…翼宿先生の授業を。

本当に奇跡だと思った。
体育担当の先生は2人いる。
翼宿先生と攻児先生。

たまたま私のクラスは…翼宿先生だったから。
嫌いな体育も翼宿先生に会えるならって…




「ん?俺の担当クラスの補習はだけやん。」




彼は、私の名前をなぜか下の名前で呼ぶ。


“名前”
昔、可愛いからや!って言ってたけど、自分だけは特別なんだって期待しちゃう。



「ほな、!補習を始めんで…。」
「は…い。」
「せやなー、は持久走のノルマまでぎょうさん残ってるで?」
「どれくらいですか?」
「4キロやな^^」
「え゛!?」


は目を丸くし、その数字を疑った。
その姿に翼宿はニィっと八重歯を出し、笑う。


は普通教科は優秀やけど、体育は苦手なんやな…。」
「あ、その…そ、そうなんです;;;」
「まーええわ。3キロにまけたる!頑張りや♪」
「いいんですか??」
「他の先生には内緒やで?特に攻児先生には…な?
 あいつにバレるとめっちゃうるさいねん。」
「あ…はい。」



二人だけの内緒。秘密…
何か嬉しい。
頑張りや♪って…幸せだよ?




は校庭を走り始めた。
3キロ…



ハァハァ…
ハァーー
ハァー




ー♪」
「は…はいーーーー」




冬だと思えない暑さ。たまに吹きつける風。
眩しい太陽の日差し。


クルシイ
ツライ
アシガイタイ
コキュウガ…グチャグチャ


歩こうとすると、翼宿先生が…って名前を呼ぶ。




ハァハァ…
ハァーー
ハァー

クルシイ
モゥ…
アキラメタイ
アルキタイ






、頑張りや…」
「……ハァーーー」





ツカレタ。





ーー!もう少しやで!!」





3キロの地点。
それはつらい道の終わり。

トオイ…
ヤメタイ
アト、ドレクライナンダロウ…
ソコニハ、ナニガアルノダロウ…

眩しい太陽の光がを照らす
だんだんの体力を奪い去ってゆく






ッッッ!!!! ラストスパートや!!!!」




私の名前を大きな声でいうと
翼宿は長い腕を横に広げてゴール地点に立っている。





ツライ
キツイ
クルシイ

でも…
もう少しだから。
だってゴールには…




は残りの力を振り絞り全力疾走。
思いっきり翼宿の胸の中へ飛び込んだ。





「ゴーーール!!!! よー頑張ったやんけ。お疲れさん^^」




そういうと、翼宿はを優しく抱きしめ、の頭を撫でた。
何度も、何度も…
持久走を終えた後は、呼吸を整える為すぐに止まるのはいけないんや。
せやからゆっくり数メートル歩かなあかん。
と、翼宿は言うが、は疲れきって足に力がはいらない。
それを悟った翼宿はの肩を持ち支え背中を摩りながら歩いた。
この胸の鼓動の速さは走り終えたから?
呼吸を整えるどころか速度が…



「……////」
「顔、赤いで? 、大丈夫かー?」
「えっ;あ…へ、へ…平気ですからっっああ!!!!」



図星のようには顔を真っ赤にして声が裏返えりながら、
顔を抑え翼宿から離れた。


「ほ、補習終わりですよね?友達待たせてるんで…。」
「よ〜頑張ったな^^ お疲れさん。」
「あ、ありがとうございましたっ。」



は翼宿の顔を見ずに慌てて走っていく…
翼宿はの姿が見えなくなるまで目を追った。




☆ ★ ☆ ★




日は少し落ちかけ始め、少し暗くなったよう−−−

は補習を終え待っていた美朱と唯に会い、3人で下校。
どうやら話し合った結果、の家でチョコ作りをすることになった。
の家に向かう道。




〜(^^)さっき掲示板に貼ってあったの見た?」
「え?なぁに?」


唯はニヤニヤした顔で聞いた。
どうやらが補習をしている間に、唯と美朱は掲示板を見に行ったようだ。


「おめでとう^^ 校内人気ランキング第1位:
「え!?私〜っっ!!?」
「渡すんじゃなくて、貰う方も多くなるんじゃない??」



先日校内で人気投票していた。
まさか自分が1位になるとは…

可愛い&美人、頭よし、性格よし、優しい、面倒見がいい。
1年生にして生徒会の副会長になるという注目を浴びる
だけど、体育だけがダメだっていう完璧ではないところがまた人気のポイントだった。



「そんなは誰にあげるの?」


唯はにニヤニヤしながら肘で突っつき聞く。
美朱はそんな二人の間に入るように二人の肩を持ち入ってきた。


「ねね、私達。女子高だしあげるとした先生?それとも他校?」


「「 先生っっ!!  ………え? 」」


唯との声が揃った。
それに対して美朱は返事をする。


「私も先生だよ。」
「じゃぁ、みんな先生にあげるの?」
「そういえばさ、表向きはチョコ禁止だけど、先生達みんな貰ってるって先輩から聞いたよ。」
「毎年恒例なんだってね^^」
「…誰先生が人気なんだろう?」



は二人や他の生徒が翼宿にあげるのかと大きな不安になった…
唯は先輩達から聞いたと、メモ帳を取り出し去年のバレンタインの情報を言う。


理事長の星宿先生は美形で気品な方…
たくさんの生徒が理事長室に通いづめで、毎年理事長室にはチョコの山ができている。

今年から生物担当になった張宿先生。
真剣でいつも研究されてる、その姿も可愛らしくて…人気だとか。
新任だからどれくらいの生徒が渡すのかは予測不可能。

保健医の軫宿先生。
大人の男性って感じで怪我も何でもすぐに治しちゃう。
一度保健室にいったら仮病でも保健室に通うほど虜になる…
治して貰った御礼にチョコを渡す生徒が耐えない。

国語の井宿先生はいろんな顔を持ってて…
3等身の姿が可愛いし、お面をつけた姿も素敵って
何よりお面をはずした真剣な姿が一番大人気。
〜なのだ。は母性本能をくすぐるらしい。

家庭科の柳宿先生。
男なんだけど…お姉さんって感じで…いろいろ相談とか乗ってくれるv
とっても優しくて理想の女?って感じ^^
意外にチョコが多いって聞く。理事長が目当てらしいけど、本当はどうなのか…

英語の梶原先生は…
サングラスをつけて授業する姿がワイルドでかっこよくてってことで、
チョコを渡す人がいるらしいけど、今年は貰わないって。

担任の数学担当の鬼宿先生は、
授業が面白くてお金型のチョコを渡すと喜ばれるとか^^
梶原先生と同じで、今年は誰からも貰わないって宣言してたよ。

体育の翼宿先生と攻児先生。
二人は熱血教師で特に攻児先生はチョコを欲しがってるって。
翼宿先生は…情報がなかった。



とにかくほとんどの生徒が全員の先生に渡す人が多いということが分かった。


は疑問だった。



「何で、梶原先生と鬼宿先生は貰わない宣言したんだろうね。」
「本命がいるからかなっ!」


「「そうだね、きっと…」」


「?」


今度は美朱と唯の声が揃った。





『……翼宿先生。。。』


は翼宿の情報を得ることはできなかったが…
の心の中では気持ちはずっといつもひとつ。



『あなたはこの苦しいほどの気持ちを…受け取ってくれますか?』






☆ ★ ☆ ★






同刻。
の立ち去ってゆく後姿を眺める翼宿に攻児がやってきた。


「行ってしも…」
「何やっとんねん、幻狼ー!」


攻児は翼宿の背中をドーンと押し突っ込みを入れる。
少し怒り気味の口調にも聞こえた。
関西弁の体育教師。先生の中で親友な二人。幻狼は翼宿のニックネーム。


「補習をしとったんじゃっ!」
「そないなん、知っとるわボケ。今、生徒に何しとったんやと言うてんねん。」
「…?」
「今の生徒、めっちゃ可愛いやろ?何抱きおうてたん!?」



ミラレタ?
ミスカサレタ?



「アホォ!走り終えて呼吸整える為に歩けへんから支えてただけやんけ。」
「…そうなんか?それだけかいな?」
「当たり前やろ。」


笑いも交え、翼宿は否定。


オマエハ
ナンデ
ソンナニ
ムキニナルンヤ?


「せやけど、幻狼!あのっちゅ〜生徒。めっちゃ可愛ええな!」
「…一年で副会長になった一目置かれとる生徒らしいわな。」
「教師と生徒…禁断の関係もええと思うんやけどなー。」


攻児は空を見上げながら呟いた。
それは小声だったような…でも翼宿には聞こえていた。



モシカシテ?


「…攻児、のこと、好きやったん?」
「せや♪完璧やのに、体育が苦手やて…可愛らしいわ!」



翼宿の顔がギュっと眉間にしわができ、真剣な顔になった。



「…攻児もかいな。」
「…幻狼?何か言うたか?」

「いや、何もあらへん。」



攻児は首を傾げる。


「やっと見つけましたよ、翼宿先生、攻児先生。
 職員会議の時間ですっ。至急職員室に集まってください。」

「あー今日は職員会議やったわ!梶原先生、おおきに♪」



中指で眉間の部分を押し黒いサングラスを直す梶原先生が現れ、翼宿と攻児を呼ぶ。
攻児はそそくさと早足で職員室へと足を動かし梶原先生と職員室に向かい始めた。
翼宿も数秒遅れて二人の後ろを歩き始める。







『 攻児…  オレかてずっと、ずっと 』








***** 後編に続く *****




※HP用に多少加工いたしました。
 尚内容はまったく変わりありません!