「「「「「暑い……」」」」」
海へ行こう!!!
8月。
異常な暑さが続くこの季節。
現代ではクーラー・扇風機等の機械に頼り、暑さをしのぐ。
しかし、天地書の中にそんな物がある筈も無く……
「アイス…かき氷ぃ……。ジュース…炭酸飲みたい…。」
「美朱、そんな食べる物ばっかり…。クーラーが欲しいよ、クーラーが…。」
「だ〜〜」
「異常やで、こないな暑さは……」
「皆辛そうねぇ…。
あたし、こういう時だけ生身の体じゃなくてよかったって思うわ。」
「…私もそう思う。」
「熱中症になったら治療してやるぞ?」
「「「「「……………」」」」」
皆あまりの暑さに少しでも涼しい場所を求めていた。
宮殿の風通しのいい部屋・庭にある大きな木の木陰…。井宿の話によると、この世界でも稀に見る暑さらしい。
「張宿ぉ…、どっか涼しい場所あらへんか?」
「涼しい場所ですか。海とかはどうでしょう…?」
張宿の言葉に翼宿を除く4人が反応する。
4人の視線が交差し、翼宿の顔が青くなっているのを気にも留めずに立ち上がった。
「井宿、海まで移動できる?」
「大丈夫なのだ!」
「。水着はどうするの?」
「これから式神に持ってきてもらう!後浮き輪とかも!」
「じゃあ10分後に、庭に集合って事で!!!」
此処で暑さに耐えるよりはいいと思ったのだろう、皆の行動は早かった。
鳳綺に出かける事を告げに行く井宿。水の用意をする美朱と魏。
自分の式神を呼び出し、水着や浮き輪を持ってくるように頼む。
「そう言えば翼宿泳げなかったわねぇ…?」
「………」
「頑張ってさんにカッコイイ所見せないといけませんね。」
「嫌われぬ様、頑張らねばならんな。」
そして柳宿達に散々からかわれる翼宿。
10分後。井宿の術で、一行は最寄の海へと移動した。
■ □ ■ □ ■
「海〜〜♪」
一行の目の前には、白い砂浜と青い海が。
現代の海とは比べ物にならないほどの綺麗な海だった。
「魏ー?水着着たー?」
美朱とは服の下に水着を着ていた。
着替えてきていなかった男性陣は、近くの林で着替え。
「3人とも水着似合うね!」
3人がどんな水着を着ていたかはご想像にお任せいたします。
「翼宿ー!泳がないのーーーー?」
海岸に座っている翼宿に向かってが言う。
結構深い所から叫んでいるの為、波に消されないように大きな声で。
「いや、俺は…
「翼宿ってば泳げないのよー!」
「柳宿っ!!」
「いいじゃないの。教えてもらうチャンスかもよ?」
「……………」
柳宿と小声のやり取りをしている間に、が砂浜に上がって来た。
スタイルのいいの水着姿が眩しい。長い髪から水が滴り落ちる。
「折角来たのに…。海岸に居ても暑いだけだよ!大丈夫だから、行こうっ!!」
そう言っては翼宿の手を引っ張っていく。翼宿は戸惑いながら後ろに居る柳宿を見る。
柳宿は口だけを動かして『頑張れ』と言うと、翼宿に向かって笑顔で手を振った。
「浅い所なら大丈夫?」
そんなに深い場所には行かず、翼宿の腰位の深さの場所に居る。
此処なら溺れる心配は無い。
向かい合う体勢で、は翼宿の両手をしっかりと握っている。
「翼宿、よく聞いててね?
"貴方の乗っていた船が転覆しました。
幸いな事に陸から近く、もう少しで陸に辿り付く事が出来そうです。
生きる為には、絶対に陸まで泳ぎきらないといけません。
貴方は近くにあった木の板に捕まって必死に泳ぎ始めた…" と、考えながらやってみよう♪」
「…は?」
「いいからやってみる!
ちゃんと手持っててあげるから……ね?」
「お、おう…」
の言葉に、翼宿は小さく返事をして二人で練習を始めた。
繋がれた手から伝わる体温が妙に照れ臭くて、翼宿は赤くなった顔を水につけた。
2時間後……
「頑張れ!後少し!!!」
其処には一人で一生懸命泳ぐ翼宿の姿が。もう少し、もう少しで10m。
あれから2時間ずっと練習をしていた翼宿は、少しずつだが泳げるようになっていた。
「っはぁっ!!!」
がばっと翼宿が顔を上げた。泳いだ距離は約10m。
「すごいじゃん翼宿!2時間でたいした進歩だよ!!」
見ていた美朱達も驚きを隠せない。
翼宿は失われた酸素を補おうと肩で息をしている。
「大丈夫?…少し休む?」
「は…?」
「私?うーん…ちょっと泳いでくる!!」
そう言うとは沖に出て行った。
■ □ ■ □ ■
が泳ぎに行ってから1時間。
もうすぐ日が暮れる。だが、は戻ってくる気配すら見せなかった。
「俺、探しに行ってくるわ!!」
「ちょっと翼宿!!」
柳宿の制止を振り切り、翼宿は海へと向かった。
ぎこちない泳ぎで、を探す。
この広い海でもし何かあったら……。そう考えるとどんどん心配になってくる。
青い海と空を
引き裂いて 飛び出そう
君と過ごすこの夏は僕の宝物
この声は…。
周りを見渡すと、遥か沖の方に洞窟の様な岩場が見える。
おそらく、其処から聞こえてくるのだろう。
I can feel fine 焼けた肌 ぎゅっと熱く抱いて
きっとそっと 目を閉じて 思い告げるから
I can feel fine and the fine day
時間(とき)よ止まれと願った
もっとずっと このままで風感じていたい
(Feel fine!/by倉木麻衣)
楽しげな歌声が近くなってくる。
洞窟の中を覗くが、暗くて何も見えない。
「…?」
奥へ奥へと進んでいく。
すると暗い洞窟の中が明るくなっていった。
岩の間から差し込む光の真ん中にがいた。岩の上に座ったは人魚を連想させた。
「翼宿?」
「お前こんな所に居ったんか…」
「まさか此処まで泳いで来たの!?」
「…?…おう」
「すごいじゃん。もう泳ぎは完璧?」
笑いながらそう言う。
そう言えば、あんまり意識せんと泳いどったな…と呟く。
楽しそうに話す二人の後ろに黒い影が忍び寄っていた。
「っ!後ろっ!!」
の後ろにいた黒い影の正体は一匹の鮫。それもかなり大きい。
翼宿との二人くらい軽く食べてしまいそうだ。
「あぁ…さっき仲良くなったのv」
「…は?」
思いもよらない台詞。
は鮫の黒くて大きな背を撫でる。鮫も嬉しそうに身を摺り寄せる。
緊張感が一気に抜け、脱力する。
「本間、無茶苦茶やなぁ…」
「無茶苦茶はどっちよ。さっきまで泳げなかったのに…」
「……あんな、…」
翼宿が少し赤い顔で口を開く。は「何?」と首を傾げる。
「俺…
「やっと見つけたっ!!」
洞窟の岩を通り抜け、姿を見せたのは柳宿だった。
驚くと、ガクッと肩を落とす翼宿。
「皆そろそろ帰るからって探してたのよ?」
「ゴメンゴメン。行こう!」
「帰りはこの子が乗っけてってくれるって!」
そう言いながらは鮫の背に捕まり、洞窟の入り口へ向かう。
「やっと言おう思ったのに…」
「え゛っ…。まぁ、次があるって!頑張んなさいよ!」
■ □ ■ □ ■
暫くして海岸近くの沖に達が戻ってきた。
黒い影に乗って……。
「鮫っ!?」
皆が驚いたのは言うまでも無い。
来年の夏も皆と来れるといいな…
☆管理人からのコメント☆
夏海様のサイトでフリー配布していたものを頂いてまいりましたw
残暑お見舞いという事でした〜
海、良いですね〜
翼宿に海はお似合いですよ〜(*^−^*)
しかも、私のために(名前変換している為・・・)泳いで探しに来てくれるなんて〜
もう幸せですvvv
夏海様、どうもありがとうございました☆