…好きやで?」








消える事無い愛の言葉を









何度目かは分からない告白。
いつもいつもに軽く受け流されて終わってまう。毎回本気で言うとんのに……。




は異世界からやって来た八星士やった。
強くて、明るくて…姉キ達や美朱とは何処か違う雰囲気を持っていた。
いつの間にか俺の心の中に入って来て、俺の世界を変えた。
女なんか嫌いやったし、興味も無かった。でも……だけは特別なんや。















皆はそれぞれ出かけてて、宮殿内の一室には俺との二人だけ。
はこっちの世界の本が読みたいとか言って、さっきからずっと本と
睨めっこやし…。


窓から差し込む光がを照らす。
漆黒の髪が光を反射し、長い睫毛が影を落とす。真剣な瞳、
戦いの時とは全く違う。落ち着いていて何処か優しい瞳。
手を伸ばせば触れられる距離に居る。
机に対して横向きに座っていた姿勢を正す。少し身を乗り出して
髪に触れた。
手入れの行き届いた髪はさらさらと俺の手から逃げていく。





集中しきっているのか、顔も上げない
聞こえていないのかと思い、小声で言ってみる。自分の本心を…。


「…好きや……」


何の反応も返ってこない。
ただ真剣に本を読む瞳が輝くだけで…。
何度告白しても…届かない。
いつもは意味深な笑顔で笑うだけで…返事は、無い。
髪から頬へと手を移動させる。がそれに反応して顔を上げた。
深紅の瞳が俺を捉えるだけで柄にも無くどきどきしてしまう。
が、は軽く俺に向かって微笑むと、すぐに視線を本に落とした。



本間、届かへんなぁ……。



何を考えているのかさっぱり分からない。
美朱みたいに喜怒哀楽が全部顔に出てくれればなぁ…。
全部笑顔でやり過ごすから、『もしかしたら』なんていう微かな希望を
抱いてしまう。
強い。力の事じゃない、辛い出来事を乗り越えてきて誰よりも
心の強さを持った彼女。
気高く美しい…女神とかってこんな感じなんやろうか……。
そんな事を考えてしまう時点で自分が自分じゃない様だ。












、何処か行くの?」


夜。
夕食を終えた後、扉に向かうに美朱が聞く。
開けられた扉から顔を覗かせ答える
「散歩」と有り勝ちな答えだが行く場所はきっといつもの場所だろう。
月を見ては泣いていただったが、最近はそんな姿を見ていない。
狼等の野生動物も多い、危険な場所。最初の頃は心配しとった俺等
やったけど…。

「狼?もう皆友達だけど…?」

なんて台詞を聞いて全員脱力。
その頃は凶暴な鮫とも1時間で仲良くなれる女やって事を知らんかったし。
動物は人間の言葉を理解する事が出来るけど、人間は向こうの言葉を
理解する事が出来ないらしい。
は特別な波長を聞き取る修行をしたんやって。


そんな訳で心配せんでもええねんけど…。
それでもやっぱり気になって、後からあの場所に行ってみる俺。
に会って変わったなんて言われてもピンと来おへんけど、
やっぱりそうなのかもしれへん。
今までの自分やったら、大丈夫やって分かっとるのに様子見に行ったりは
せんかったやろうしな。













いつもが居る場所。
ほら、今日もまた此処に居た。狼等の動物達と一緒に居る時もあれば、
一人で居る時もある。
澄んだ歌声が辺りに響いている。歌われる曲は毎回違って明るい曲の
日もあれば悲しい曲の日も…。




ふいに振り向いたと目が合った。
一瞬驚いた様な顔をして、すぐにいつもの笑顔に変わる。歌が、
止まった。




「翼宿?」




いつもと同じ笑顔で笑う
周りには誰も居ない、はちゃんと俺を見ている。
言うんやったら、今しか無いやろ…?と自分自身に問いかけた。




「俺は、が…好きなんや」




何度目かは分からない告白。
返ってくるのはいつもと同じ笑顔。
限界なんや、今の気持ちの行き場所が無くて…。





















「…嫌いなんやったら嫌いやって言うてくれればええやん……」




知らない間に口に出している自分に気付いた。
どんな顔をしてと顔を合わせればいいのか分からず俯いてしまう。
…このまま本間に嫌われてもうたら……。そう思い、ギュッと目を瞑る。
髪に何かが触れた。5m程あった距離が1秒ほどで縮まって、
目の前に居る。
俺の髪に触れているのはの手。
その手がゆっくりと俺の頬へと移動する。…さっきと逆やな……。






「馬鹿」

「………」

「…嫌いな訳無いじゃない」






目を開けると今までで一番優しい顔をして笑っているが居る。






「大好きよ」

「…!?…俺もが好き…やで。…愛しとる……」






最後の部分が聞こえたかは分からへん。
でも、『好き』って気持ちはちゃんと届いたから…。

















二人で山道を下りていく。
何も変わっていない様だったが、しっかりと二人の手は繋がれていた。
思い切ってずっと気になっていた事を聞いてみる。



「なぁ…。何で両思いやのに言うてくれへんかったん?」

「だって翼宿って…両思いになったらあんまり好きだとか
言ってくれなさそうな気がしたんだもん。」



予想しなかった言葉に一気に脱力。
そんな理由で俺がこんな思いしとったんかい!!
…でも、脱力すると同時にちょっとだけ安心感を覚えた。






「そんなん…これから先、何べんでも言うたるわ」























俺の隣で微笑む君に


これから100回でも1000回でも10000回でも……








消える事無い    愛の言葉を――――











  ☆管理人からのコメント☆

夏海様〜、10000HIT突破おめでとうございま〜す☆
しかも、突破記念フリー小説までやって下さるなんてvv
それもとっても甘々なのを〜!!
翼宿、ついに告って成功したねっ!
なんか翼宿の恋ってどうしても応援したくなるんですよね〜
好きだから故?(爆)

夏海様、これからもサイト運営頑張って下さいね☆
小説、ありがとうございました〜♪



※HP用に多少加工いたしました。
 尚内容はまったく変わりありません!