何処からか聞こえてくるのは幸せの音
窓から差し込む温かい日差しと、焼きあがったケーキの香り
そしてたくさんの笑い声
ひ だ ま り
フローリングの床に散らばった、沢山のおもちゃ。
"嗚呼もう。"は苦笑した。我が家のお姫様達は…、と。
当のお姫様達は、TVの前で目を輝かせて子供番組を見ている。
一人はパパの膝の上。一人はの頭をぽんぽんと叩きながら。まぁ、本人は撫でてるつもりなんだろうけど。
の方は軽く眉間に皺を寄せ、少しだけ不機嫌そうだ。でも決して怒る事は無く。
「もうすぐ光君達が来るよ、楽しみだね。朱理、朱亜」
キッチンからは甘い香りが漂って来る。
の声に、の頭を撫でていた娘がとてとてと歩いてくる。
そっと抱き上げると、ふわりと羽根が生えているかのような軽さ。
にこにこと微笑む姿はまるで天使のようだ。此処にも、天使。そして翼の膝の上にも、天使。
二人ともに良く似た一卵性の双子。背丈もほとんど同じ、違うのは目もとの印象だけ。
長女朱理は少し強めの目元、次女朱亜は若干たれ目だということ。
でも殆ど違わないので、初めて会う人はよくよく見ないと分からない。
「…あれは?ちゃんと隠した?」
声を落として翼の耳元に口を寄せる。
に抱かれたままの朱亜が、「あれぇ?」と首を傾げる。
さっきまで翼の膝に居た朱理は何時の間にかお気に入りのぬいぐるみで遊び始めていた。
「勿論、抜かりは無いで」
ニッと翼が歯を見せて笑った時、丁度玄関のチャイムが鳴った。
時計は約束の時間の五分前を指している。今日は唯も居るから時間前行動なのか、とは笑った。
腕の中に居る朱亜を翼に預けると、玄関に向けて小走り。パタパタとスリッパが音を奏でる。
「いらっしゃい」
扉の向こうの、見慣れた顔ぶれ。
美朱と魏、唯と哲也。美朱の兄・奎介。そして小さな二人の王子様。
今年二人は達が初めて会った頃の年になる。我が家のお姫様達より一つ上。
「光、ほら"こんにちは"は?」
「陸もこんにちはって」
「「こんにちは」」
ぺこりと頭を下げた二人に、も笑顔で返す。
少し緊張しているのか顔が硬い。ふっと微笑んで、は二人の頭を撫でた。
「今日は遊びにきてくれてありがとう、二人も喜ぶわvおやつはケーキだから楽しみにしててね」
ぱぁっと二人の顔に笑顔が広がった。
後ろからママ、とを呼ぶ声がする。甘えんぼの朱亜の声を受けて、お客様を家の中へ。あー!という声が被った。
北斗を見つけて嬉しそうに声をあげる、光と陸。そして朱理と朱亜を見て目を輝かせる美朱と唯。
きょとんとする朱理と朱亜。は頭を抱えるように翼を頭に、小言の一つでも聞こえてきそうだ。
「かっわいー!!」
「またに似てきたねー!よかったよかった」
「…どういう意味やねん」
「あ、翼居たのー?」
「居ったわ!」
急に賑やかになった緋山家。
何年経っても変わらない。この面子が集まると、にぎやかにしかなりようがないのだ。
そうだ、と美朱が光の耳元に口を寄せた。光は「うん!」と大きく頷くと、陸を連れて部屋の隅へと。
其処には美朱達の荷物が置かれている。お目当ての紙袋を見つけると、中をガサゴソ。
出てきたのは可愛くラッピングされた包み。
「「おたんじょうび、おめでとう」」
にこにこと、プレゼントを渡す王子様二人。
一方、二人のお姫様は「もらってもいいの?」と言うようにを振り返る。鏡を見てるように左右対称に。
が笑って頷くと、二人は華のように笑った。がよく言う、天使の微笑み、で。
「ありがとー!」
「…ぁりがと」
朱理は関西弁まじりの、朱亜は頬を染めて恥ずかしそうに。
包みの中から出て来たキャラクターもののマグカップを嬉しそうに翼とに見せる二人。
その顔は本当に嬉しそうで、その場に居た全員の頬が緩んだ。
■ □ ■ □ ■
時計はまもなく三時を指そうとしていた。
子供たちはそれぞれ楽しそうに遊んでいる。
光と一緒に車のおもちゃで遊ぶ朱理、陸にぬいぐるみで遊んでもらっている朱亜。
大人たちはジュースやお菓子の準備をしている。テーブルの真ん中にはが作ったケーキ。
「翼、そろそろ…」
翼は軽く頷くと、そっとリビングを出た。
戻ってきた彼の手にはふわふわのテディベア。白いのとピンク色の、それぞれ二人の好きな色だ。
気付かれないように、そっとそっと二人の後ろに近づいていく。
朱理の方にはピンクのテディベア。朱亜の方には白のテディベア。上手く熊の手を使い、二人の肩を同時に叩いた。
「くまさんだぁー!!」
朱理の嬉しそうな声が部屋に響いた。朱亜は大きな目を更に大きくした後、ふわりと笑った。
翼の大きな手が二人の頭を撫でる。自分の半分くらいの大きさのテディベアをぎゅーっと抱きしめご機嫌の二人。
パパにありがとうは?そんなの言葉に、二人は小さく音を立ててパパの頬に唇を落とした。
「あーあ、もう翼ったらメロメロね。お姫様達に」
「ホント、あんな顔見た事無ぇもんなー。」
「二人ともによく似てるしね」
そう言うと六人は顔を見合わせて笑った。
ケーキの上には小さな二本のろうそく。
姉妹は嬉しそうに顔を見合わせた。大好きなパパとママからもらったテディベアを抱きしめて。
あのろうそくを吹き消して、お願い事をするんだよ?二人とも、ふーってして?
二人は小さく息を吸い込んだ。
「朱理、朱亜。お誕生日おめでとう」
■ □ ■ □ ■
「…ん……?」
「起きたんか?」
目を覚ますとそこは、大きな桜の木の下。
此処は?と一瞬考えるが、すぐに至t山で一番大きな桜の木の下だったと思い出す。
ぼうっとしているの顔を、そっと覗き込む翼宿。
「なんか…。夢、見てた」
どんな夢やったん?
その問いにまた考え込む。思い、出せない。
何の夢だったんだろう。両手に残るぬくもりと、心に残る温かさ。
「分かんない、覚えてないんだけど…。」
覚えているようで、覚えていない。
覚えていたくない夢ほど、覚えている事が多いくせに。
どうして肝心な覚えていたかった夢は覚えていないんだろう?
でも、何となく、少しだけ覚えている。ぼんわりと、まるでろうそくの炎のように。
「あったかい、幸せな夢」
☆管理人からのコメント☆
夏海ちゃんがサイト復活して、そんでその時2周年すぎてた、と言う事で2周年記念のFDLを頂いてまいりましたw
「春風」の続き的な感じですね^^
良いですよね〜こんなほのぼのとした家庭w
女の夢ですよ〜(笑)
自分に似た子供がいて、そんな幸せを一緒に過ごせる夫に友達
本当に良いですよね(*^^*)
ほんわかして、幸せな気持ちになりますv
さすがは夏海ちゃんです!!
冬眠あけなのにすごい!!
本当に、2周年おめでとう!!!
これからも応援してるよ〜★☆
※HP用に多少加工いたしました。
尚内容はまったく変わりありません!