付き合い始めて最初のバレンタイン

普通なら恋人の為に張り切ってチョコレートを作って・・・

でも、でも、

恋人が自分より料理上手な場合はどうすればいいんでしょう・・・?





First Valentine





「妖はさ、十夜さんにあげるの?」

「もっちろん♪だって雄飛にあげるんでしょー?」


返ってくる返事は予想していたもの。
恋人達にとっては一大イベントであるバレンタイン。
あげない訳にはいかないし・・・でも料理は苦手だし・・・と頭を抱える
バレンタインまで後一週間、練習するしかない・・・!





が向かったのは近くの書店。
練習するにも作り方が分からなければ何も出来ない。
まずはチョコ・・・お菓子作りの本を探さなくては・・・。
広い店内で料理の本の売場を探す。店員に聞くまでもなく、同じ年頃の女の子が居る場所に行けばよかった。
女の子のグループから聞こえてくる会話は今が一番気にしている、バレンタインの話。

「付き合い始めてから最初のバレンタインって大切だよねv」

自分と同じ事を言っているのを聞いて、は思わず溜息をついた。
この時期、チョコレート関連の本も沢山ある。この中からどれを選べばいいんだろう…?
適当に本を手にとって見る。パラパラとページをめくれば、美味しそうで可愛らしいチョコレートの写真。
コレ美味しそう・・・と思っても、難易度が高かったり・・・。材料費の事だって気にならない訳ではない。
暫くは真剣な眼差しで本のページを見つめていた。



がレジにならんでいると後ろから肩を叩かれた。


「雄飛!?」

「よっ!偶然だな、何買うんだ?」


そう言ってが胸に抱くようにして持っている本の表紙を覗き込む。
此処でバレてしまっては・・・!!とは本を抱く手に力を込める。
見えちゃったかな、との頬を冷や汗が伝った。


「美味し・・・?料理なら俺が教えてやるぜ?」


幸いにもチョコレートの文字は見えなかったようだ。
このままレジを済ませればその時に本の表紙が見えてしまう。
はホント何でもないから!!と言って雄飛に向かって笑顔を作る。


「あたし、CD借りていこうと思ってたんだ!じゃあね!!」


くるっと踵を返すと、は二階に続く階段を上がっていった。
後ろから雄飛が自分の名前を呼ぶ声が聞こえたが、振り返らなかった、聞こえないフリをして。
レジから見えない場所に来ると、は壁にもたれて大きく息を吐いた。
知られないでよかった・・・と安堵の気持ちが押し寄せてくる。
お菓子作りの本を買う自分を見られたくはなかったから。プライドが高いといえばそうなのかもしれない。
なんとなく・・・彼に知られたくはなかった。





        ■ □ ■ □ ■





バレンタイン当日、学校が終わっては雄飛の家に来ていた。
雄飛の家のお手伝いさんであるオバQ・・・もとい、玖さんの誕生日だから。
かばんの中には玖さんへのプレゼントと、一週間前から練習したチョコレートが。

玖さんにプレゼントを渡し、納涼さんと4人でお茶を飲み、気付けば外は真っ暗。
まだ6時なのに・・・・・冬は本当に日が暮れるのが早い。
の家は雄飛の家からだと少し離れている。夜道は危ないから、と雄飛が送ってくれる事になった。
私が車で送りましょうか?という玖さんの台詞は笑顔で遠慮して。


「・・・さむ・・・っ・・・」

「そんな薄着で来るからだろ・・・」


そう言いながら、に自分の上着を着せる雄飛。
心配そうに寒くないの?と聞くに向かって大丈夫だからさ、と笑う。
冬の冷たい空気が妙に頭の中をハッキリとさせる。
早く渡さないと、と思うほどかばんの中のチョコが重く感じる。
・・・・・喜んでくれるかな?少し心細くもなってくる。


「ちょっと喋っていかねぇ?」


雄飛が公園のベンチを指差して言う。
チョコを渡すのにも丁度いいし・・・と思いながら、は軽く頷いた。
夜の公園は静かで、昼間の賑やかさが嘘のよう。
先にベンチに腰掛けている雄飛にはチョコを差し出した。緊張のせいか、顔が熱い。
きっと今、あたしの顔赤いんだろうな・・・と心の何処かで思った。


「・・・・・コレ、作ったの・・・。雄飛のよりは美味しくないと思うけど・・・」


驚いた様な顔をして、雄飛は渡されたチョコを受け取った。
の手を引っ張って、自分の隣に座らせる。
そしてはぁーっと大きく息を吐いた。


「本、あんなに必死で隠すから・・・他のヤツにやるのかと思った・・・・・」


雄飛はふっとに向かって微笑むと、食べてもいいか聞いた。
は頷くと、美味しくないかもしれないけど・・・と軽く俯いた。


が作ったものなら何でも食うし」


丁寧にラッピングされたそれを、そっと開けていく。
白い箱の中にピンクのふわふわした素材がひかれていて、その上にチョコが乗っている。
雄飛は一口大のチョコを、そっと口に入れた。は緊張にぎゅっと目を瞑った。


「なんだ、美味いじゃん。」

「ホント!?」


予想外の言葉に、バッとが顔を上げる。
小さなベンチで隣同士に座っていた為、自然と顔が近い。
雄飛はふっと真剣な目をすると、そっとに口付けた。
甘くて、ほろ苦い、チョコレート味の優しい口付けを。


「・・・・・・・・・・な?」

「・・・うん・・・・・vv」





初めてのバレンタインは

甘く、優しく・・・ずっと心に残るものになりました――











  ☆管理人からのコメント☆

夏海ちゃんのサイトでやってたバレンタインイベントに参加して、見事抽選で選ばれたのです〜(≧▽≦)
めちゃ嬉しい〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!
まず、最初の設定からして胸キュンでした〜★☆
でで!!
読んでいくうちにもう絶叫したくなるほどに素敵で〜!!
もう叫ぶのこらえるのにホントに苦労しました〜(爆笑)
久々に、心から幸せになれる小説読みました〜(*^^*)

夏海ちゃん〜ホントにありがと〜〜〜vvvvvvvv



※HP用に多少加工いたしました。
 尚内容はまったく変わりありません!