「あの子は…は、まだ泣いているんですか?」

「………ああ」






君の笑顔が見たいから







肉体は滅び、魂だけになった彼等。
魂が新たに転生する為に通らなくてはいけない扉がある。
其の前には下界の様子を見ることの出来る鏡。転生前の魂達の心残りを写す物でもある。


「金蝉、僕らが死んでからもうすぐ1年です。……そろそろ限界なんですよ…」

「…分かっている」


転生前の魂がその場所に留まる事にも期限がある。
亡くなってから一年。其れを過ぎると其の魂は二度と転生することが出来ない。
彼等が死んでからもうすぐ1年が経とうとしていた。





夜になれば聞こえてくる。の悲痛な歌声。
月を見て泣く姿が痛々しくて……。


「…が、もう一度笑うまでは……」

「「…………」」


そう言いながら鏡に映るかつての恋人を見つめる金蝉。
も金蝉も…。二人の気持ちが分かるから天蓬と蜷廉は何も言う事が出来なかった。











は、また厄介な事に巻き込まれている
『朱雀八星士』 俺もよく分からないが、がその八星士らしい。
其処に、の今居る世界にアイツを想っている奴がいる。本来ならば憎くてしょうがないだろう。
でも……俺にはに触れる腕もの所に走っていく足も無い。
今の俺には何も無い。アイツを、を想い続ける心があるだけ。









何度鏡に映る姿に向かって名前を読んだだろう。
何度泣いている背中を抱きしめたいと思っただろう。きつく抱きしめて二度と泣かさずに……。



お前には幸せになってもらいたいと思っている…
俺が幸せにしてやりたいと思っていたが、もう俺にそれは出来ない
でも俺の事を忘れて欲しくない…


他の奴と幸せになってくれだなんて

               …本当は言いたくないんだ










              ■ □ ■ □ ■








「…金蝉、っ、会いたいよ………」



仲間に心配かけへん様に無理して笑う
誰も居らへん場所で声を殺して涙を流す姿が、心に焼き付いて離れんかった。



何で?何で無理して笑うんや?
泣いて欲しい訳やないけど、無理して笑って欲しくも無いんや。
泣きたい時は泣いたらええ。俺の胸なら幾らでも貸したるから……。




今はどんなに俺じゃない奴の事を思っていても…
いつかは俺の隣で笑って欲しいんや――










              ■ □ ■ □ ■ 










終わりの時は、少しずつ近づいていった。


「…金蝉、もう行かなくてはなりません」

「……」

「気持ちは分かるが…。俺達はもう此処に居る事は出来ねぇんだよ」


一度瞳を伏せ、再び鏡を見上げる。
黄金に輝く月の下で、声を殺して泣く。…胸が、痛い。
アイツを一人残して逝かなければならないのか…。唯一つ、心残りがあるとしたらアイツの事だろうな。







もうお前に触れる事は出来ないが…見守ってる。
例えどんなに遠くからでも、どんなに辛い状況だろうと。
もう一度お前があの頃の笑顔を取り戻すまで



絶対笑わせたる
無理して笑っとる笑顔やなくて…
心からの笑顔で






                               君の笑顔が見たいから――










  ☆管理人からのコメント☆

夏海様のサイト、10000HIT突破記念になんとフリー配布なさっていたイラストに沿ったお話だそうです☆

最遊記も知っている私としてはホントに読みたくて堪らなくてずっと待っていました〜(*^−^*)
そしたら、やっぱりとっても素敵な小説でした☆
甘いようで、切ない・・・そんな感じでした
金蝉が、女性にあんなに優しいなんて・・・
でも、思い始めたら一直線な気もします(^^)
三蔵好きですvv
もち、翼宿もvvv

イラストもとっても素敵だったんですよ〜☆
なんと!夏海様の初公開イラストだったそうです!!!
イラストへはこちらから⇒
夏海様、本当にどうもありがとうございました〜☆